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最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介

合成生物学は略してシンバイオと呼ばれることも(iStock / Getty Images Plus)

第5次産業革命に発展すると期待され、ピーター・ティールやビル・ゲイツら大物投資家たちが続々と参入──。いま、世界で最も熱い分野といわれているのが「合成生物学」だ。生きた細胞を人工的に作り出そうという研究で、すでに600社以上の関連企業が誕生し、年間投資額は4000億円に上る。

1月24日発売のフォーブス ジャパン 2020年3月号では、「AIが加速させた『合成生物学』600社の衝撃」と題し、急成長を遂げる合成生物学のリーダー企業を紹介する特集を組んでいる。だが、そもそも合成生物学企業とは? 今までのスタートアップとの違いは? 業界最大級のアクセラレータ、シンバイオベータ社CEOに訊いた。


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2019年10月上旬、著名なテクノロジー業界の関係者が一堂に会するイベントが催された。

グーグルの元CEOエリック・シュミットに、“人工知能(AI)界のスター”ダフネ・コラー、“遺伝学界の巨人”ことジョージ・チャーチ。加えて米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)や、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、そして多くのベンチャー投資家たちが顔を揃えた。主催したのは「SynBioBeta(シンバイオベータ)」。合成生物学関連企業を支援するアクセラレータである。

そもそも、合成生物学企業とは何か? 

シンバイオベータのジョン・カンバーズCEOは、それを「特定のテクノロジーに依拠する会社というよりも、生物工学を使ってさまざまな社会課題を解決するムーブメントに近い」と定義する。

「明るい未来を信じ、その実現に生物学が 大きな役割を果たす、そして社会の諸問題を生態系から変えていくことを使命と考えている企業であれば、『合成生物学企業』に該当する、といって差し支えないでしょう」

これらの新興企業が台頭している大きな要因に、まずはクラウドコンピューティングと人工知能(AI)の技術的基盤が整備されてきた点が挙げら れる。それによって、DNA解析・合成のコストが下がり、実験コストの低下につながり、起業しやすくなったのだ。

そして、もう一つ。生物学の領域を中心に、高い専門性をもつ研究者たちが起業するようになったこと。合成生物学の起業家の多くは「博士号」を取得している。従来はアカデミアか、製薬大手しか進む道がなかった研究者たちにとって起業が現実的な選択肢になったのだ。

二日酔いの症状を軽減するプロバイオティクス食品を開発したZBiotics社CEOのザック・アボット博士は、「今までのアカデミアには、自分の発見を誰かに商品化してもらうのを待つだけの他力本願な面があった」と指摘する。

成果を自らビジネス化しようとする研究者が増えた結果、投資額も急増している(下のチャート参照)。つまり、一線級の役者がそろっているため、エコシステムの構成要素の一つひとつのレベルが高く、強力な舞台ができている点がこれまでとの大きな違いだ。


SOURCE: SYMBIOBETA “SYNTHETIC BIOLOGY INVESTMENT REPORT 2019 Q1”

さらにカンバーズは興味深い点を指摘する。

「合成生物学の起業家たちは博士課程に在籍していたため、概して年齢が高めです。社会的な立場からくる責任感、生物学という生命倫理とかかわる領域で生きてきたことから、一般的な起業家たちとは社会に対する視点がそもそも違う。それが社会課題の解決という強い意識につながっているのです」

舞台も役者もすでにそろっている。未来への進化は、生物工学という究極の近道を手に入れたと言えるのだ。



1月24日発売のフォーブス ジャパン 2020年3月号「AIが加速させた『合成生物学』600社の衝撃」特集では、注目の合成生物学企業を多数紹介しています。
・味の素もパートナーの有機体工学のリーダー企業「ギンコ・バイオワークス」
・遺伝子編集で新たながん治療を可能に「カリブー・バイオサイエンシズ」
・人工クモの糸で繊維業界に旋風を起こす「ボルト・スレッズ」
・遺伝子組み換え技術による二日酔い緩和飲料を開発「ジー・バイオティクス」
・キノコから梱包箱や食用肉、人工肺を作り出す「アトラスト」 ……etc.

文=井関庸介 

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