廃棄物のコンポスト化(堆肥化)
人間の排泄物や動物の糞尿の堆肥化、あるいは埋め立ては今に始まったことではありませんが、二酸化炭素の排出量削減はここ最近の問題です。バイオガス発生装置は、コンポスト化による生成物を再利用することで、温室効果ガスの排出を抑え、グリーンエネルギーの生産を可能にするという二重の利点があります。加えて、地力(土壌の肥沃度)を向上し、食品の安全性を支えるというメリットもあります。
「ニューデリーのコンポスト化プロジェクト」では、インドのデリーの青果市場から出る固形廃棄物が埋め立て処分されることがなくなり、そのうちの73000トンが毎年約200トンの堆肥に変換されています。カンボジアの「有機性廃棄物処理装置プログラム」では、18000以上の農場で処理した生ごみを肥料として使用するだけでなく、バイオマスストーブに替えることで、2006年以降、15万トンもの木材を節約しています。
調理用コンロ
従来の調理用コンロは、効率が低く室内に煙を発生させます。これは1時間あたり、400本のタバコに火を付けているのと同じです。煙の発生とエネルギーと木材の消費を抑える調理用コンロは、健康、エネルギー、環境のどの面においてもメリットがあります。
インドでは、従来型の調理用コンロから発生する有害な煙が年間50万人の若い命を奪う原因になっていると言われています。「空気浄化のためのコンロ提供プロジェクト」では、すでに効率的な調理コンロが20万世帯以上に提供されました。マリでは、「クリーンな調理コンロプロジェクト」によって、地元のコンロ製造工場で400にも及ぶ雇用が創成されました。さらに、国土の半分以上をサハラ砂漠に占められているこの国で、森林破壊を防ぐため、2400平方メートルの面積の木が植樹されています。
中国・四川省の麻咪澤(Mamize)自然保護区には、薪を集めるコミュニティがあり、これは周辺の生物多様性とジャイアントパンダの生息地にとって脅威となっています。「世界自然保護基金(WWF)による麻咪澤における薪を使わないコンロの普及プロジェクト」では、この問題に取り組んでいます。
点火率の改善など、調理用コンロに少し介入するだけで、利用者に経済的な利益を与えることができます。例えば、南アフリカで実施されている「ハイフェルト大気環境プロジェクト」では、年間約30ドルの節約を実現しています。
水力発電
持続可能な水力発電所は最も効率的な発電方法ですが、建設コストが障害になるケースが多くみられます。ブラジルでは、「Incomex Hydroプロジェクト」により3つの水力発電所が建設され、クリーンエネルギーを生産していますが、これにより、年間14000世帯の電力消費量に相当する83000トン以上の二酸化炭素を削減しています。
さらに大きなスケールで見ると、中国において「Huóshui水力発電プロジェクト」は、毎年50万以上の農村部の家庭にエネルギーを供給しており、170人以上を対象とした持続可能な農業ワークショップの開催、社会的イニシアチブへの資金提供、さらに約200人の学生が参加した環境保護に関する教育プログラムを通じてコミュニティを支援しています。
風力発電
世界の増大するエネルギー需要を満たすことができるもう一つの再生可能なエネルギー源は、風力発電です。経済成長と電力需要が供給を上回っているベトナムでは、バック リエウ風力発電所が同国初の大規模な沿岸風力発電プロジェクトを始動しました。
インドでは、Mitcon風力発電所が国全体に電力を供給し、雇用を創出しているだけでなく、女性起業家を支援しています。アルゼンチンでは、2000年初頭からの経済不況により、エネルギー危機が発生し、電力需要に持続可能な方法で対応できない状態に陥っています。現在、世界で最も強風が吹く地域の一つとして知られるパタゴニアでは、Rawson風力発電所が稼働し電力供給を支えています。
二酸化炭素排出量削減が、2020年の年次総会に向けた、世界経済フォーラムの持続可能性への取り組み(国際機関による持続可能性戦略の一部)の最優先課題であることは変わりません。「カーボンオフセット」は、回避できなかった二酸化炭素排出量をスイス国内外で持続可能な発展を促進するような方法で相殺することです。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)