ビジネス

2020.01.24

「ヴィーガン食」で地球を救う。スウェーデンの宅配ビジネスが拡大

「Enkla Kassen」共同オーナーのJohannes Källgren(右)とPatrik Olsson(左)

スウェーデンでは、誰か家を訪ねるときに必ず聞かれることがある。「何か食べられない物はありますか?」という質問だ。

ベジタリアンやヴィーガンが当たり前のように存在するこの国では、これは、アレルギーや好き嫌いの確認というより、そうした主義に配慮する必要がある。ここ数年、日本でもヴィーガンへの関心は高まっているが、スウェーデンではもっと身近なものとして存在している。

そして、そのヴィーガンをビジネスとして成長している企業もある。ストックホルム商科大学在学中に出会ったJohannes KällgrenとPatrik Olssonが起業した「Enkla Kassen」だ。2017年の創業当初は、ストックホルムだけでヴィーガンの食材をデリバリーしていたが、いまはスウェーデン全域にまで拡大している。


PLANET A(地球)を存続させるために

「Enkla Kassen」、直訳すると「シンプルな袋」という社名を掲げる同社が展開するのは、ヴィーガン食材を梱包し、レシピとともに自宅まで届けるサービスだ。毎週または隔週の頻度で、3種類のメニューが、それぞれ4人分の食材とともに届けられる。料理自体は平均30分で完成し、手間はあまりかからない。


メニューの一例。タンパク質は大豆や落花生などを加工して、肉のような見た目や食感に近づけることが可能だ。

彼らが掲げるスローガンは、「あなたの日々の暮らしをシンプルにすれば、みんなにとってより良い未来となる」というもの。そこには、「THERE’S NO PLANET B」と添えられている。PLANET Bは存在しない。つまり、ヴィーガンとしての食生活に近づけることで、PLANET A(地球)を存続させないといけないというメッセージだ。



彼らがヴィーガンビジネスを始めたのは、他でもない地球環境のためなのだ。もちろん、動物がかわいそうだとか、健康のためという理由もあるのだが、最優先課題は、地球の気候変動問題や環境問題を解決することである。

当然、配送においても環境への配慮はぬかりない。配送の大部分には自転車や電動トラックを利用。また、冷蔵や冷凍を必要としない食材のみを扱っているのも彼らのこだわりで、ここにも、社名に掲げる「Enkla(シンプル)」の思想が表れている。
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文=吉澤智哉

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