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2020.01.24

「ヴィーガン食」で地球を救う。スウェーデンの宅配ビジネスが拡大

「Enkla Kassen」共同オーナーのJohannes Källgren(右)とPatrik Olsson(左)


ただ、食品業界というのは薄利多売でなかなか利益が出しづらい。消費者は低価格を期待するが、このように食材にも配送にもこだわる彼らにとって、材料や物流コストを抑えるのは簡単ではない。そのため今後の方針としては、コスト削減よりも、こうした食習慣のアピールによって顧客を増やすことであるという。

ヴィーガンというのは、何もある日を境にまったく肉を食べなくなるということではない。実際、彼らも100%ヴィーガンではなく、Patrikはおよそ98%、Johannesは90%ヴィーガンといったところで、時々は肉や乳製品を食べることもあるとのことだ。各個人ができる範囲で徐々にシフトしていけば良いのだ。

彼らに限らず、スウェーデンで多くの若者がヴィーガンに興味を持つきっかけになっているのものに、2014年に公開された「COWSPIRACY」というドキュメンタリーがある。COWSPIRACYとは「Cow(牛)」と「Conspiracy(陰謀)」を掛け合わせた造語で、同作は畜産業は他の何よりも地球を破壊している産業であることを詳細に描いている。

ヴィーガンはネット世代の若者に多く、テレビや新聞以外からの情報の影響が大きいのではないかと彼らは捉えている。確かに高齢になるほど、それまでの習慣を変えることは難しく、新たな情報源に目を向けることも難しい。彼らが目指す顧客拡大は、高齢層が課題となるかもしれない。


(Getty Images)

スウェーデンに移住して約4年、こうした環境で暮らしていることもあり、私は妻と話した結果、牛肉を買うことを控えるようにした。正直、値段が高いということもあるが、環境のことを考慮するとスーパーで牛肉に手を伸ばす時に罪悪感さえ感じるようになった。私たちも「数%はヴィーガン」と言えるかもしれない。

日本では夏に40℃を超えることも増え、台風の規模も数も、私の幼少期とは比べものにならないものになっている。こうした小さなアクションでも、一人一人が行動に移すことが大事なのではないかと感じている。
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文=吉澤智哉

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