ビジネス

2020.01.21

会社の幸せよりも先に「個人の幸せ」を突き詰める|SHOWROOM 前田裕二

SHOWROOM 代表取締役社長 前田裕二

アーティストやアイドルによるコンテンツ配信が無料で視聴でき、誰でもすぐに生配信が可能な“夢を叶える”ライブ配信プラットフォーム『SHOWROOM』。急成長する同サービスの運営会社SHOWROOMの代表取締役社長・前田裕二氏に、起業家としての心得や事業戦略についてドリームインキュベータの小縣拓馬が聞いた。(全6話)※本記事は2017年5月に実施したインタビュー内容を基に作成しております。


まずは自分の世界観を持ってほしい

──最後にこれを読んでいる起業家や起業家になりたい人たちにメッセージがあればお願いします。

メッセージか……。それこそ、本記事の読者という「他者」への想像力を発揮しにくいからちょっと難しい。その人のパーソナリティが分かっていれば、的確なメッセージを提供できる自信があるんですが。

それでもあえて言うなら、「自分の世界観や信念をもつこと」。じゃあ前田の信念はなんなのかというと、繰り返しお伝えしている通りなんですけど、僕は「運命正当化の旅」という信念を持っています。人ではなく、運命と戦う。自分自身に降りかかってきたネガティブなあらゆる事象をむしろバネにして、正当化して、乗り越えていきたいという思いがあります。

SHOWROOMに何があっても絶対に折れない、負けないって思うのは、根底に僕のそういった原体験とか、煮えたぎるような信念があるからだと思っています。そういう意味では僕からのメッセージは、自分をしっかり見つめて、確固たる世界観を持って欲しい、ということです。

──それは起業家個人としての?

理想はもちろん、個人と会社の両方です。というのも、そもそも何らかの形で「幸せになるために」起業してるわけですよね。

これは社員に対しても言うんですけど、社員が事業に貢献してくれるかどうかよりも、もっと大事なことがあります。それは、「その人の人生自体が幸せかどうか」ということ。会社の幸せより、個人の幸せが先、と思っています。

だから例えば「アメリカのXXXって勉強会に行きたいんです」とか社員が言ってきた時に、そこで学んだことがSHOWROOMにアウトプットとして出てくるのは何年後になるか分からないし、出てこないかもしれない。でもそれは関係なくて。SHOWROOMとしてはその人の人生が幸せになることを最大化したい。なぜかといえば、人生いろんな選択肢がある中で、わざわざここを選んでくれたっていう縁や、それに対する感謝があるからです。

先ほどの起業家の話でいうと、自分の人生の中にいろんな選択肢がある中で起業するって道を選んでいるわけで、それはなんらかの効用を追っているわけじゃないですか。とすると自分の人生にとっての幸せはなんだ、と。自分の人生においての物差しとかコンパスはなんですかっていう。事業は抜きにして、そういうものをまず構築してほしい。そっちが絶対大事です。

事業から来ちゃうと、「あれ?気づいたらなんで俺はこんなB向けのサービスをやってるんだっけ?」とか、ふと思いたち、立っていられなくなることもあるかもしれません。もちろん、事業モデルがなんだとしても儲かればいいんですっていう価値観があるってことに気づいて、自分はその価値観だと決めて動くんであればそれはOKだと思います。が、それがないと、きっと、どこかでぶれてしまいます。

だから僕の話を聞いて、「ああ、事業を成功するには仮説思考が大事なんだ」とかじゃなくて、まずは人としてあなたには何が幸せなんだい?と問うてほしいです。
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文=小縣拓馬 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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