今回は、その「SaaStr」の代表を務めるジェイソン・レムキン氏と、同カンファレンスで「Japan SaaS」セッションに登壇するDNX Ventures・マネージングディレクターの倉林陽氏の対談をお届けする。
倉林:日本では昨年、大型IPOをしたSaaSスタートアップが誕生したり、同領域で資金調達を堅調に伸ばした企業も多かったことから、SaaS業界自体に大きな注目が集まりました。そんな日本に比べて先行しているグローバルなSaaS業界の動きについて、ご意見を聞かせてください。
レムキン:米調査会社のガートナーの調査によると、2020年のSaaSのグローバル市場は、年率20%で伸びており、およそ1800億ドルにまで成長すると予想されています。そのうち30%の約600億ドルは米国「外」の市場です。
そんななかで、私がもっとも注目しているのは「インド」です。なぜなら、4、5年前までインドのSaaS企業は、ほとんど自国内の市場だけを対象に事業展開していましたが、現在のインドのユニコーンスタートアップは、グローバルに事業展開しているからです。そのほか、中国にも数多くのユニコーンSaaS企業があり、米国外のSaaS企業は成長が著しいと言えます。
もちろん、世界最大である米国のSaaS市場も同様の伸びをしており、米国SaaS企業の成長が鈍化するとは思えません。米国では、上場・非上場にかかわらず、SaaS企業の成長率には眼を見張るものがあります。例えば、Twilioは毎年、10億ドル規模で収益を伸ばしている。
倉林:昨年上場した、SlackやZoomもその良い例ですね。日本でも昨年、Sansanが時価総額15億ドル程度でIPO(新規株式公開)し、国内初のSaaSユニコーン企業となりました。
レムキン:Sansanは米国進出するのでしょうか。
倉林:クラウド型名刺管理サービスを提供しているSansanは、需要があるアジアに横展開しているほか、米国向けには新たなアプリケーションの展開を検討しているようです。また、我々の投資先でもある建設業界向け施工管理アプリのオクトは、現在ARR(年次の継続収入)成長率と成長効率性が、TwilioやService Titanよりも大きく、提供する機能や顧客層も拡大している。このように、日本からも優秀なSaaSスタートアップが出てきています。