倉林:成長し続けるグローバルSaaS市場で、レムキンさんはどの領域に注目しているのでしょうか。
レムキン:注目している領域のひとつとして、現在世界を席巻している定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)が挙げられます。例えば、UiPathの企業評価額は80億ドルにもなりますし、Automation Anywhereも企業評価額が70億ドルで、セールスフォースから資金調達したばかり。
興味深いのは、それらの企業が、従来のソフトウェアを自動化していること。さらに、多くのカテゴリーのソフトウェアがクラウド化していることです。例えば、ソフトウェア業界で2番目に大きな分野は「コールセンター」ですが、米国では現在、そのクラウド化、自動化が進んでいます。こうした既存領域のクラウド化、自動化といったアップデートが今後も進んでいくでしょう。
それを表すひとつが、Zoomの事例だと思います。新規カテゴリーのサービスかというとそうではありませんが、既存カテゴリーにおいて「よりよいサービス」だったからこそ、これだけ世界に普及しました。サービスをいかに簡単に、スピーディーに、そしてオープンにしていくかが重要な要素だと思います。
レムキン:私は日本のSaaS市場に関して十分に理解していないのですが、欧米のSaaS企業が日本進出をする際に知っておくべきことはなんでしょうか。
倉林:米国と日本市場はまったく事情が違うことでしょうか。米国の場合は、顧客企業に多くのエンジニアがいる上、SaaSテクノロジーの実装に対する経営陣のモチベーションも高い。一方、日本では、国内の70%のエンジニア人材は、SIer(システムインテグレーター)企業に雇用されている。そのため、顧客企業の社内にSaaSアプリケーションの実装、運用ができる人材が少なく、UI/UXの優れたアプリケーションの提供が求められます。これが理由で、米国と比較して、SaaSの実装が進んでいませんでした。