危機を迎えるアメリカの高齢者介護保険制度

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時すでに遅し

こうした問題に、アメリカは何十年も前に取り組むべきだった。大半の先進国はすでに手を打っている。

アメリカでも、いまから30年前の1990年に、広範囲の保険制度について話し合う超党派委員会が、長期介護制度の改革に関する包括的報告書を作成した。高齢化社会の到来を訴えた伝説の政治家クロード・ペッパー(Claude Pepper)にあやかってペッパー・コミッション(Pepper Commission)と呼ばれた同委員会は、その報告書で解決策を提案した。ところがその後、アメリカの政策立案者たちはほとんど何もしていない。

2020年が来てしまったいまは、もはや手遅れだ。ベビーブーマー世代向けに国家的な保険制度を策定するためには、労働年齢にある現役世代の所得を大規模移転せざるを得ない。それどころか、X世代(その最高齢は50代前半だ)を対象にした包括的解決策を検討する時間さえもなくなりつつある。

アメリカはひと世代を無駄にした。そして現在、人口の高齢化という避けられない事態によって、かつてない社会的変化への対応が迫られているが、そのための準備はできていない。もう時間切れなのだ。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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