アジアのみちばた経済


そこで、ヒシャブはすでに多くの人が所有している携帯電話の電話回線に着目したのだ。同社のベンガル語の音声認識の精度はすでに99.8%を超えているという。毎月100万時間もの音声データを蓄積しており、データが増えるにつれてサービスの精度も向上してきている。

バングラデシュの首都ダッカでスタートアップの育成などを手がけるStartup DhakaのMustafizur Khan氏は「これからの経済ではデータが中心になる。バングラデシュという人口が多い国で大量のデータを蓄積することは、他国に展開するうえでの大きな強みにもなる」と分析する。

バングラデシュの女性たち
融資を受けている女性たちもサービスを多く使っている(ヒシャブ提供)

北海道に拠点を置き日本でも展開

バングラデシュでは少額の事業資金を貧困層の個人に低利で貸し出す少額融資「マイクロファイナンス」が浸透している。しかし、融資先の読み書き能力の低さがネックとなり、融資の査定を受ける際などにコストや時間がかかるといった課題も生じていた。ヒシャブのサービスは、このようなマイクロファイナンスの現場でも広く導入されている。

データ調査のFinancial Inclusion Insightsが発表した2017年のデータによると、バングラデシュで携帯電話を所有する人のうち、最も利用頻度の高い機能は電話だった。女性の73%、男性の86%が利用しているという。インターネットの利用は女性で9%、男性で24%に留まっており、アプリをダウンロードする人は男女ともに12%以下と極めて少数だ。

共同創業者のアーメッド弥央氏は「人々が新しいことを始めたり、生活に取り入れたりするのにはいくつかものハードルがある。しかし、電話というツールを使うことで、日常生活の延長上でサービスを簡単に導入できる点がメリットだ」と話す。

今後は電話をするだけで、外食店や病院などのホームページといったインターネットサービスにアクセスし、簡単に予約ができるシステムの開発なども検討しているという。

バングラデシュの町の様子
バングラデシュには社会課題を解決するスタートアップが多く登場している(筆者撮影)

当初は低所得者層を対象としたBOPビジネスとして産声を上げたヒシャブのサービスは、近日中に日本でも展開を予定している。先進国を筆頭に、生活を便利にするさまざまなアプリやITサービスが登場しているが、それらはITリテラシーの高くない高齢者などにとっては使いにくく、展開に課題を抱える企業も少なくない。そういったパソコンやスマートフォンを使いこなせない層に対してサービスをアプローチしたいという日本企業からの引き合いが強いという。

今後は北海道に拠点をもうけ、日本の会社との接点も増やしていくという。同社のサービスは、ITリテラシーや読み書き能力が低い人だけでなく、文字の読み書きが難しい全盲の人が使える可能性も秘めている。バングラデシュで生まれたサービスが、国とターゲットを変えて、大きく広がるのにそう時間はかからないはずだ。

連載:アジアのみちばた経済
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文・写真=土橋美沙

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