「即レス瞬発外交」のトランプ大統領が陥った、END GAMEなき大誤算

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アメリカ大統領選挙がある今年、イランとの軍事衝突に対してアメリカ国民世論は割れている。「戦時中に実施される選挙で、現役の大統領が(出馬断念を除き)再選を逃したことはない」という、一部の歴史学者の言葉が引用され、少なくとも主要な戦争が大統領支持率を時限付きながら上げてきた現実を指摘する論調が増している。

また、「さまざまな意見が存在する」といった優等生的メディアの発言もあるが、そうしたコメントは、いまは不適当と言えるだろう。なぜなら、米大統領選の舌戦がこれよりますます苛烈化し、軍事的緊迫の行く末が見えないなかで、「他人事」化しているからだ。

デヴィッド・ペトレイアス元米陸軍大将(元CIA長官で、トランプ政権発足時の国務長官候補。現在、KKRパートナー)は、米CBSの看板番組Face The Nationに出演し、1月3日(現地時間)のトランプ大統領によるイラン革命防衛隊「コッズ部隊」率いるソレイマニ司令官の殺害を、「我が国のCIA長官が殺されるのと同等」と発言している。その衝撃の大きさを理解すべきだ、という意味だ。

過去にイランが行ったと疑われているアラムコ油田やタンカー攻撃といった事案を、トランプ大統領は政治的判断も働き容認してきている。そのせいで抑止力は弱体化したと見られてしまい、今となって抑止力を再度構築しようとしてトランプ大統領が司令官殺害を承認した──。そう容易に推測できる。今回の軍事行為は、1979年のイラン革命以来、最も大胆とされている。

最近になり両国は報復をこれ以上やめること声明している。しかし、イランが引き続き影響下にある民間・軍事組織を活用し、アメリカや同盟国へ代理攻撃を仕掛けない確約はどこにもない。

そればかりか、肝心の「イランの核開発に関する共同包括行動計画(JCPOA)」に代わる地域安定に向けた枠組みを話し合う機会は、今となってはどのように再開可能なのか、シナリオがまったく見えてこない。シナリオをどこからどうつくるのか誰にも見えていないことから、現状が安定からほど遠いことだけはわかるだろう。

トランプ大統領の特徴は、ツイッターに見られる「反射神経外交」である。この予測困難な「場面外交」に対して、決して怯むことなく、米国言論の最前線で活躍する知識人に今回インタビューを行った。アメリカ大統領選挙と同時進行で可能な限り継続して紹介していきたい。

まず1回目は、ニューヨークの戦略コンサル企業「KARV Communications」で、金融や危機管理、エネルギーを専門とするアミール・ハンジャニ氏だ。米国政策組織「トルーマン安全保障プロジェクト」のフェローであるハンジャニ氏に聞いた。
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文=山崎ロイ

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