裁判長の証人喚問も 問題続出なアメリカ法曹界のリアル

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アメリカの法曹界は、日本と違い、弁護士と検事と裁判官との間の転職が頻繁かつ一般的であり、それゆえ裁判官も広く世間を知る機会に恵まれる一方で、時々、我流が過ぎる人間も出てくる。

過去にも、女性検事と不倫をして不公平な判決を下したとして懲罰を受けた裁判長や、態度の悪い弁護士に、法廷で手錠をかけさせて黙らせた裁判長もいる。

なかでも極めつけだったのは、推定体重200キロの女性裁判長が奇抜な行為を繰り返したケースだ。エリザベス・ラマッキアという選挙で選ばれたばかりのその新米の裁判長は、裁判官が陪審員と法廷外で接触してはいけないという初歩的な大原則を破り、担当弁護士から裁判所にクレームが提出されたところから、メディアの注目が集まった。

慌てたベテランの裁判長が、裁判所の管理上の権限によって、この新人裁判長の担当している審理中の刑事裁判を全て取り上げ、「民事だけに限る」という交通整理をした。すると、新人裁判長は、先輩の裁判長を罵倒するコメントを発表し、ベテラン裁判長を訴えるという手段に打って出たのだ。

時の人となったラマッキアは、2人の私的ボディガードを雇って法廷に通うようになる。ところが、このボディガードを法廷の金属探知機に「通らなくていい」と自分勝手なルールを適用したため、裁判所から「新人裁判長自身の業務停止の仮処分」を受けた。

これに対して、ラマッキアは暴走を始め、テレビやラジオでも自分の周囲の人間を罵り始める。先輩裁判長だけでなく、自分のアシスタントに対しても「交通反則切符を非合法に握りつぶそうとしたり、陪審員の出頭義務を勝手に解除した」などと非難、アシスタントからも事実無根の名誉毀損だと訴えられた。

 「刑事裁判有罪率99.9%」の日本

過激なTシャツを着る裁判長も、この巨漢の新人裁判長の件も、地方裁判所クラスの判事は選挙で選ばれているので、雇用主たる地方裁判所も簡単にはクビにできない。今回のTシャツ裁判長も、たとえ完全にクロと判決が出ても、数カ月の職務停止以上の罰は与えられない。

一方で、公平や透明性に注意を払う裁判長もいて、報道のカメラが自分の法廷に入ることさえ許す裁判長もいる。有名なO・J・シンプソンの刑事裁判が全米に報道されたのも、担当したランス・イトウ裁判長(日系アメリカ人)自身の判断で法廷内にカメラが持ち込まれたためだ。
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文=長野慶太

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