毎回100本近く用意する絵の具は床に飛び散り、まっさらだった白装束は多様な色が混ざり合い、徐々に濁っていく。腕や足だけでなく顔や髪の毛にまで勢いよく飛散した絵の具に、小松は気にすることもなく、ニコッと微笑み、凛とした佇まいで写真撮影に応じるのだ。
VR作品はベネチア国際映画祭へ。大英博物館の永久所蔵作品も
日本では2014年5月に出雲大社に絵画「新・風土記」を奉納し、同年9月に東京で初めて個展を開いた。それ以降の海外展開のスケールの大きさは、草間彌生、村上隆、奈良美智に次ぐ可能性を秘めた新世代のアーティストと言っても良いだろう。
2015年からは、小松が造形から製作し、独特の色彩で絵付けをした有田焼の狛犬の作品が大英博物館の永久所蔵となった。館内にある日本ギャラリーに展示されていることを知る日本人は、意外と少ないかもしれない。
最近では、2019年夏のベネチア国際映画祭VRインタラクティブ部門に、世界的なVR先駆者の台湾企業「HTC CORPORATION」とコラボレーションして制作したVR作品「祈祷-INORI-」が選出された。現地でも大型のライブペインティングを行い、新たな小松の挑戦は大きな注目を浴びた。
特に、いま現代アーティストとして小松への呼び声が高いのは台湾だ。2017年に台北で日本人が経営する銀座発・現代アートギャラリー「ホワイトストーン・ギャラリー台北」で小松の大個展を開くと、1カ月間で来場者数は延べ3万人、作品は完売し、100万ドル(約1億840万円)の売り上げに上った。彼の地で2020年1月5日まで再び個展が開かれ、筆者は小松に密着する機会を得た。
いかにして小松は台湾を中心としたアジアで熱烈なファンを獲得したのだろうか。そして、小松はどうやらチーム戦で海外を渡り歩いているらしい。その熱狂を確かめるべく、現代アートシーンが盛り上がっているという台北へ向かった。
小松のアジア拠点のひとつとなっている「ホワイトストーン・ギャラリー」は、1967年に銀座でオープンした白石画廊だが、近年に香港と台湾にも3店オープンした現代アートのギャラリーだ。日本の現代アーティストの発信拠点となっているが、その若き筆頭が小松美羽だという。