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「STAR ISLAND」事業プロデューサー、エイベックスの坂本茂義氏(写真=小田駿一)

スマホとネットがあれば多様なコンテンツを楽しむことができる現代。ネットワークに乗ったコンテンツには手が届きやすくなった一方で「まだ体感したことのない」リアルなエンターテインメントへの渇望は、かつてないほどに高まっているのではないだろうか。

一般社団法人コンサートプロモーターズ協会のライブ市場調査データによると、正会員社の年間総売上額は2018年に3448億円となり、10年前の2008年(1074億円)の3倍超となっている。SNSなど即座に体験を共有できるサービスが充実したからこそ、人々は「今、この瞬間、この場所でしか味わえない」リアルな場でのライブ体験により高い価値を見出していると言える。

選択肢が限りなく増える一方で、マスに受け入れられるコンテンツが成り立ちにくい時代でもある。ましてや言語やカルチャーに依存する日本発のコンテンツは尚更、世界展開が難しい。

「STAR ISLAND」日本発コンテンツ、アウトバウンドに成功


シンガポールのカウントダウンで50万人が熱狂した、エイベックスによる前代未聞のショー「STAR ISLAND」は「花火大会は無料」の常識を覆し、日本発のコンテンツのアウトバウンドに成功した稀有な事例と言える。

STAR ISLAND シンガポール エイベックス
Shunichi Oda

シンガポールでは日本の伝統花火と500機のドローン、3Dサウンド、ライティング、パフォーマンスが融合したエンターテインメントに、最低7000円以上の有料観覧席に世界から2万人が集った。昨年9月にはサウジアラビア総合娯楽局からのオファーを受け、サウジアラビアの建国記念日に国王宮を背景に初開催し、成功を収めた。

STAR ISLANDはどのようなアプローチで日本発コンテンツのアウトバウンドを成功させたのか。日本の伝統花火の魅力と海外が欲している「文脈」とは。そして日本のエンタメの課題は──。

今や各国からオファーが相次ぐ唯一無二のエンターテインメントに成長したが、当初の構想では全くの未知数だったという。

「STAR ISLAND」事業プロデューサー、エイベックスの坂本茂義氏に現地で話を聞いた。

坂本茂義 エイベックス STAR ISLAND
坂本茂義氏(Shunichi Oda)


「シンガポールでどうですか」度重なる交渉実る


「STAR ISLAND」プロジェクトの構想の当初から、海外進出については視野にありました。

エイベックスが手掛けているダンスミュージック・フェスの「ULTRA JAPAN」の最後に花火を打ち上げるシーンがあります。そこから派生して、「お台場レインボー花火」で「ミュージック花火」を行うチームができました。そのチームと「何か一緒にできたらいいですよね」という話をしたところから構想が始まりました。

議論していくうちに「お台場のロケーションって素晴らしいよね」という話になりました。「こういった象徴的なロケーションで、国外を含めて日本の花火を打ち上げて広めていってもいいんじゃないかな」と。

そこから「ロケーションエンターテイメント」という言葉が生まれました。シンガポールのマリーナ・ベイや上海、ラスベガス、ロンドン……。SNSなどでいろんな夜景を見ていく中で、「ひょっとして、これって海外で開催するのはありだよね。インバウンドも重要だけど、アウトバウンドで日本のカルチャーを海外に持っていくってすごくいいよね」という話になりました。

中でも、やはり成長著しいアジア、特にシンガポールで実施したいという思いは強くなっていきました。シンガポールにはエイベックスの現地法人もあります。東京・お台場海浜公園で開催した2017年の初回から、実はシンガポール政府観光局を招待させていただき、「シンガポールでどうですか」とプレゼンをしました。2018年も同様にお越しいただきました。

8K・4Kのカメラも導入して映像も撮って見ていただくなどしてプレゼンを重ね、ようやく正式に、2018年のカウントダウンでの初開催につながりました。

2018年の初回公演が大好評でしたので、僕らとしても複数年契約の交渉をさせてもらって、2019年からの計3年の契約を交わすことができました。今回のカウントダウンはその1年目です。

「サウジアラビアでも」 STAR ISLAND、ナショナルデーに開催


実はサウジアラビアに対しても2018年からアプローチをしていました。経産省が主導する「日・サウジビジョン2030」のジャパニーズエンターテインメントコンテンツとして、色々プレゼンさせていただきました。交渉期間は長かったのですが、最後に2018年のシンガポールのショーを見てもらったところ「これはぜひサウジアラビアでもやりましょう」と一気に決まり、2019年9月23日のナショナルデーでの開催につながりました。

シンガポールでの実績が海外に広く響いていることがよくわかりました。日本に大使館のある国にはインビテーションをお送りし、見にきて欲しいとアプローチ。ほかにもいくつかの国からオファーがあって、徐々に進めさせていただいています。

文=林亜季、写真=小田駿一

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