日本初の「酒蔵ホテル」 築100年の古民家は、新たな観光資源になるか?

プロモーション動画の撮影には、外国からのボランティアも参加した。


KURABITO STAYの一番の売りは、なんといっても「酒造り体験」。

そのため、田澤さんは「ほかの蔵でもやっている櫂入れや瓶詰めだけではなく、蔵人の真剣で張り詰めた雰囲気のなかに宿泊者も加わり、麹造りなど酒造りの根幹となる工程を体験できるようにしたい」と、井出さんに持ちかけました。



すると、井出さんは「宿泊者が蔵の売店でお酒を購入してくれるなど、さまざまなメリットもあるので、基本的には協力したい」との考えから、条件付きで受け入れることにしました。以前、軽井沢のホテルと共同醸造した際に、一般の人を蔵に入れても酒質に影響は出なかった経験も、この提案を受け入れても大丈夫と考えた理由です。

宿泊者の受け入れに対して橘倉酒造が提示した条件は、大吟醸酒を造っている時期は受け入れないこと。さらに、造りに影響を与える食べ物を避けることや、香水禁止、爪の手入れ、徹底的な手洗い、手ぬぐいやキャップ、白衣の着用などです。

こうして、大吟醸酒の造りの時期(12月下旬から2月上旬)を除いた酒造りの期間は、洗米作業や蒸米を運んで冷ます作業をはじめ、麹室での作業も体験できることになりました。

橘倉酒造では、日本酒のほかに甘酒なども造っているため、造り期間以外でも甘酒の麹造りや、酒米の田植え、稲刈りなども体験してもらうなど、季節ごとのコンテンツも提供する予定です。

地域の活性化を目指して

「KURABITO STAY」の宿泊プランは、酒造りの時期の2泊3日(金曜日から日曜日)のパッケージで、朝食2回、夕食1回がついて59,000円。酒造りの時期以外は、39,000円です。

料金に含まれる夕食は、蔵の近くにある和食店と契約し橘倉酒造のお酒に合う料理を楽しめます。そのほかの食事は、蔵周辺の飲食店を利用してもらうことになります。

この仕組みは「KURABITO STAYがお客さんを囲い込むのではなく、周囲のお店にも足を運んでもらうことで、少しでも地域の活性化に貢献したい」という田澤さんの思いからだそう。


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取材・文=空太郎

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