日本初の「酒蔵ホテル」 築100年の古民家は、新たな観光資源になるか?

プロモーション動画の撮影には、外国からのボランティアも参加した。


2017年3月、「こもろ観光局」の仕事をしているなかで、地域の魅力ある場所を巡るバスツアーを企画して欲しいという依頼が田澤さんのもとに届きます。

その立ち寄り地として受け入れを快諾してくれたのが、佐久市にある創業300年の酒蔵・橘倉酒造の専務、井出平さんです。

これをきっかけとして、橘倉酒造の営業の仕事を手伝うことになった田澤さん。蔵に足しげく通うようになると、ふと、蔵の一角に古くて使われないまま放置されている2階建ての建物を見つけました。

話を聞くと、この建物は大正10年(1921年)に建てられた築100年ほどの古民家で、造りの期間に蔵人が寝泊りするため、2000年ごろまで使われていたそうです。


橘倉酒造の専務・井出平さん(写真右)

田澤さんは「この古民家を改装して宿泊施設にしたらどうでしょう。さらに、酒造りにも参加してもらうことで、とても魅力的な体験ができるはず。現役の酒蔵の敷地内に泊まって酒造り体験ができれば、日本で初めての取り組みになりますよ!」と、井出さんに提案します。2018年5月のことでした。

しかし、「面白いけど、改装に相当なお金がかかる」という理由で、実現は難しそうでした。

そんなとき、起業を目指す人たちが事業計画を発表するビジネスコンテスト「みんなの夢AWARD in 小諸」が、同年9月に小諸市で開かれると聞いた田澤さんは、酒蔵をホテルにして酒造り体験もできる一連の計画で出場し、見事グランプリに。さらに、2019年2月に開かれた全国大会でもグランプリを受賞しました。

その結果を聞いた地元の銀行から、融資への前向きな返事をもらいます。さらに、古民家を観光資源などに活用する新規性の高いプロジェクトに資金支援をする総務省の制度があることがわかりました。

こうして、蔵人体験を提供する「酒蔵ホテル」の開業と、それを運営するまちづくり会社「KURABITO STAY」の設立へ踏み出したのです。



現在、建物は橘倉酒造から譲り受け、宿泊代と朝食代を料金に含む、「ベッド・アンド・ブレックファスト(B&B)」スタイルの宿泊施設に改装中です。
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取材・文=空太郎

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