気候変動、格差・分断、グローバリゼーション、デジタル革命……。世界は劇的に変化し、そのスピードはますます加速している。予測不可能な時代、私たちはいかに世界を捉え、行動すべきなのか。世界の知の巨人や気鋭の経済学者たちとともに来るべき新しい世界を考える、2019年12月25日発売のForbes JAPAN(2020年2月号)の第二特集から、今回はグラッドウェルのインタビューを紹介する。
英国で生まれ、カナダで育ち、現在、ニューヨークのダウンタウンに住む世界的ベストセラー作家・ジャーナリストのマルコム・グラッドウェル氏──。
待望の最新作で選んだテーマは、人間同士の相互不理解だ。
アウトサイダーとしての経歴を生かし、人間の行動や社会を独自の視点で解き明かす同氏が6年の沈黙を破り、2019年9月、新刊『Talking to Strangers: What We Should Know about the People We Don’t Know』(邦訳は『トーキング・トゥ・ストレンジャーズ 「よく知らない人」について私たちが知っておくべきこと』。光文社、2020年6月刊)を上梓した。
ベストセラー『第1感』『天才!』『逆転!』で直感の力や成功の法則、強い相手を倒すコツを説いた同氏が新たに挑んだテーマは、他人を理解することの難しさだ。白人警官とアフリカ系米国人をめぐるサンドラ・ブランド事件。巨額投資詐欺を働きながら信頼され続けたウォール街の名士、バーナード・マドフ。多くの実例を挙げ、「ストレンジャー(見知らぬ人)」同士の誤解や思い込みという問題にメスを入れる。
19年11月、国内外を飛び回る当代随一の人気作家が多忙な合間を縫って、マンハッタンで取材に応じてくれた。
──あなたの著作には、ビジネスピープルにとっても示唆深いベストセラーが多く、日本でも愛読されています。まず、『Talking to Strangers』をなぜ書こうと思ったのか、教えてください。
現代社会の特徴を決定づけるような事柄の一つに衝撃を受け、興味を引かれたからだ。私たちが見知らぬ人たちと接しなければならない機会がいかに多いか、という問題だ。
私たちは、自分たちのコミュニティーに属さない人々に接することを余儀なくされる。どのような臆測を立てる人か、どのような経歴を持っている人なのかがわからないまま、接しなければならない。だから、意思疎通の問題が生じる。
本の中で、サンドラ・ブランドなどの事件を例として挙げたが、どの事件も、この問題を提示している。人々が見知らぬ人との触れ合いにおいて有用な方略を持ち合わせていないことに気づき、執筆の題材として興味を引かれた。