世界的ベストセラー作家が挑む「断絶を乗り越えるダイアローグ」

イラスト=Paul Ryding


──テクノロジーの進化で世界が激変する中、「人」を重視するのはなぜですか。

テクノロジーによる問題を考える際、最も面白く洞察に満ちた手法は、人々や彼らのモチベーションを描くことだからだ。読者の関心を引きつけ、複雑な事柄をシンプルに説明するには、個々の人々の話を用いる必要がある。パソコンの歴史を描くにはビル・ゲイツに話を聞く、といった具合だ。

──米国は今後、どうなると思いますか。

多様性が飛躍的に増していくのは間違いない。ひと世代前には中年の白人男性が社会を動かしていたが、今は違う。その動きは加速する一方だ。米国は、より面白く活力のある国になっていく。長期的にはポジティブな見通しを持っている。分断されているのは、首都ワシントンだけだ。後年、あのころは指導者が共通点よりも違いを強調する奇妙な時代だった、と思い返されることになるだろう。

──あなたのベストセラー『逆転!』では、ダビデ王が巨人ゴリアテを倒したように、アウトサイダーや非エリートが強敵や逆境に勝つための戦略が論じられています。日本が米中という超大国と伍していくには、どうすればいいでしょう?

日本は世界で最も成功した国であるにもかかわらず、非常に自己批判的だ。豊かな経済、完全雇用、美しい都市、犯罪の少なさ、素晴らしい文化。逆に、「他国が日本から何を学べるか」という問いのほうがふさわしい。

人口が減っても、国が滅亡するわけではない。人口が新たなレベルにリセットされるだけだ。壊滅的なことは何一つない。アウトサイダーから見れば、羨ましい点が多々ある。いかに並外れた社会をつくり上げたかということを認識すべきだ。今後も、うまくやっていくだろう。


マルコム・グラッドウェル◎1963年生まれ。トロント大学トリニティカレッジ卒業。90年代初頭よりワシントン・ポスト紙、96年より米ニューヨーカー誌でスタッフライターとして勤務。2000年に『ティッピング・ポイント』でデビュー。以後5著作はすべてニューヨーク・タイムズ・ベストセラーリストに。日本、イギリス、ドイツ、イタリア世界各地で翻訳・出版されている。

インタビュー=肥田美佐子

この記事は 「Forbes JAPAN 2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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