イラン産原油、「全面禁輸」はホルムズ海峡の安全にマイナス

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イランは米国の制裁によって原油収入が過去1年で著しく減った。それでもまだ、中国など向けにいくらかの原油輸出を続けている。こうしたなか、米財務長官のスティーブン・ムニューシンは12日、米テレビ局FOXビジネスの番組で、中国が米国の制裁に違反してイランからひそかに輸入している原油の量を減らすために、中国側と協議していることを明らかにした。

「私は中国の当局者たちと話し合いました。この件について私たち(財務省)や国務省と協議するために、代表団が訪れてきたのです。彼らはすべての国有企業に(イラン産)原油の購入を打ち切らせています。私たちは、中国側がそれ以外の(イラン産)原油についての活動も確実に停止するように、彼らと緊密に連絡を取っています」(ムニューシン)

だが米国は、イランの原油輸出をこれ以上落ち込ませるのは考え直した方がよいのではないか。イランによる比較的少量の原油輸出を黙認することは、ペルシャ湾を利用するすべての船舶にとって、ホルムズ海峡の安全が確保されることに役立っているからだ。

調査会社タンカートラッカーズ・ドット・コムの調べによると、イランの現在の原油輸出量はわずか日量57万7000バレル。主な輸出先は中国とシリアだ。同社のデータによれば、中国はイラン産原油を、国有の製油所や独立系の小規模な製油所向けにマレーシア経由で輸入している。マレーシアでイラン産原油はほかの原油と混ぜ合わされ、原産国が分からないようにされているという。

イランはこれまで、ペルシャ湾からの原油輸出が認められなくなれば、ホルムズ海峡の封鎖に踏み切ると再三警告してきた。イランが実際にこの細い海峡の通航を妨害できるのかどうかについては確証がないものの、日量50万バレル程度の原油輸出は目くじらを立てるほどのものではない。むしろ、いったんイラン側にホルムズ海峡を封鎖しても失うものが何もなくなれば、イランがそれを試そうとするリスクが高くなるだろう。

編集=江戸伸禎

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