「和人と一緒」に意味がある 札幌大生が奏でる現代のアイヌ音楽

アイヌの楽器「ムックリ」を演奏する結城陸さん


──ウレシパクラブは、アイヌでなくてもメンバーになれると伺いました。

メンバーは札幌大学の学生を中心に構成されていて、いまは20名くらいです。約6割はアイヌのメンバーですが、そうでなくてもメンバーになることができますし、他大学の学生もメンバーになることができます。



アイヌ文化について、アイヌだけではなく、和人(主に本州に居住する日本人の多数派を指してアイヌ側から用いられる言葉)とともに学ぶというのが大きな特徴です。活動は週2回で、踊りの練習をしたり、アイヌ文化について学んだりと多岐に渡ります。

アイヌの先輩方を招いて話を聞いたり、ほかの先住民族の事例を学んだりすることもあります。メンバーは卒業後も学芸員などとしてアイヌ文化にかかわる仕事をすることが多いです。

──アイヌではない人がアイヌ文化に携わることに批判の声もありますが。

和人と共に学ぶことは、とてもいいことだと感じています。アイヌ文化の相互理解にもつながりますし、なにより「自分が好きなアイヌ文化をアイヌでない人も好きになるんだ」と思い、とても嬉しい気持ちになり、勇気づけられます。

自分は、アイヌと和人とを分けて考えたくないです。血だけでアイヌ文化に携わっていいか決めるのはおかしいと思います。大切なのは文化に対するリスペクトだと思います。

逆に、アイヌの血を引いているからといって、適当にやっている人はやめてしまえと思います。日本文化を愛する外国人がたくさんいるように、沖縄の文化を愛する和人がたくさんいるように、たくさんの方にアイヌ文化を愛してもらい、携わってほしいです。

──これからやりたいことはありますか?

まだ何も決めてはいませんが、アイヌからは離れられないと思っています。アイヌであることは事実だし、過去も消せません。

でも、仕事は、アイヌに縛られる必要はないと思っています。どんな進路を選んだとしても、アイヌ文化と関わって、アイヌプリ(アイヌ語でアイヌの価値観の意味)に沿って生きていきたいです。まだ徹底できてはいないのですが。

あとは、表現者として生きていきたいと思っています。音楽をしたり、話をしたり、映像をつくったり、まだその手段はわからないのですが。そして、アイヌだから売れたというのではなく、あくまで作品の良さが先にあって、あとから「この人アイヌだったんだ」って認識されるというのが理想です。
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文=谷村一成

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