オランダの気候変動訴訟、世界の環境活動の手本に

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オランダの最高裁判所は先月、政府に対し、温室効果ガスの排出量を1990年比で25%削減するよう命じる判決を下した。国の政府に対して気候変動に対する即時行動を求める判決としては、かつてないほど厳しいものだ。

この訴訟は環境団体のウルヘンダ財団(Urgenda Foundation)が2013年に起こしたもので、同団体は、気候変動に対処するために科学者らが設定した二酸化炭素削減目標をオランダ政府が守っておらず、オランダと欧州連合(EU)の法律に違反して国民の人権を危険にさらしていると主張。オランダ政府は一、二審でも敗訴していた。最高裁の判決は石炭火力発電所の閉鎖につながる可能性があり、世界の国々にとって模範例となる。

世界各国では現在、環境法の分野における先駆的行動である「大気信託訴訟(atmospheric trust litigation)」が1442件起こされている。大気信託訴訟は、公共信託と国際的責任の原理に基づき、政府は公益のために天然資源を管理しなければいけないと主張するものだ。

注目を集めた裁判としてはさらに、ケルシー・ジュリアナが率いる21人の若者が米政府を相手取って起こした訴訟がある。連邦地方裁判所は2016年、きれいな環境の中で暮らすことは基本的人権の一部であるとする原告側の主張の正当性を認め、訴訟の継続を許可した。トランプ政権は以降、さまざまな理由を並べて申し立ての却下を求め、審理を先延ばししてきたが、結果としてメディアや専門家らの注目をより一層集めることとなった。

専門家らが推奨する気候変動対策を政府が怠った場合、政府は自国民の人権を侵害したと言えるのだろうか? この問いへの答えがイエスであることは、あらゆる面から示されているし、法廷で正義を求めるという考え方も理に適っている。オーストラリア国民は、明らかに自滅的なエネルギー・環境政策を進める政府に対し、どう行動すべきなのか? また米国民は、パリ協定を離脱したトランプ政権にどう反応すべきなのか? 行政の怠慢のせいで有毒な空気を吸って生きなければならないのなら、非難の声を上げることを考えるべきではないのか?

裁判には時間がかかる。しかし法的手段に訴えることは、政治家に気候変動対策を強いる上で最も効果的な方法のひとつだ。もちろん別の方法がないわけではない。企業の管理職としてリーダーシップを発揮したり、環境意識の高い企業を優先するように自分の消費傾向を変えたりすることもできる。

気候変動への対処はまだ可能だ。それには、危機を認識した上で、温室効果ガス排出量に見合った代償を払っていない化石燃料や航空機、自動車業界に対して巨額の助成金が出されている現状を変えなければいけない。

政治家による即時行動が必要だ。政治家の多くは、未来に向けた計画を立てる能力に欠けていたり、単に無責任であったりして、行動を起こしていない。オランダは、そんな政治家らを弾劾して変化を促すことは可能だということを私たちに示してくれたのだ。

編集=遠藤宗生

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