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現場からの医療改革


国民の政府に対する信頼度を評価する指標はいくつかある。佐藤氏は「税は国民の政府への信頼感の強力なバロメーター」と考えている。特に買い物の度に支払い額がわかる消費税は、その傾向が強いそうだ。

消費税が高いのは、ハンガリー27%、アイスランド25.5%、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、クロアチア25%など、欧州でもとくに北欧諸国が多い。一方、低いのは前述したドイツ19%、イギリス、フランス20%、イタリア22%と、いずれも欧州の大国だ。

一般論として人間集団は規模が大きくなるほど、帰属意識を抱きにくくなる。小国の国民は、税金は国による将来世代への投資と考えやすいが、大国の国民は、税金は国による搾取と感じるのは頷ける話だ。

ところが、例外もある。例えば、バルト三国だ。国民が一体となって旧ソ連の支配を脱し、IT活用で有名なエストニアのように政府主導で発展しているイメージがある。ところが、バルト三国の消費税率は欧州諸国としては高くない。エストニアが20%、ラトビアとリトアニアは21%と、ドイツ、イギリス、フランス並みだ。なぜ、このような差が出るのだろう。私は他民族に征服された記憶だと考える。

佐藤氏は「税を考えることは、国家とは何かを考えること。国民が税を払うのは、国家に生命や財産を守ってもらうことを期待するからだ」と言う。

この視点は興味深い。20世紀、欧州は英仏独伊露など大国を中心に戦争を繰り返してきた。バルト三国のように長期間にわたり他民族の支配を受けた国もある。このような国では、政府は国民の期待に応えられなかったと言っていい。

一方、消費税率の高い北欧諸国は20世紀に戦火が及ぶことは少なく、他民族に国土を蹂躙されることはあまりなかった。これらの国では、「戦争の世紀」と称される20世紀に、国家が国民の命を守ったという見方も可能だ。国民の政府に対する信頼は、国の規模だけでなく、その国の歴史が影響するのではなかろうか。

2020年代に入り、戦争を直接経験した戦前・戦中世代が鬼籍に入り始める。日本という国の来し方行く末を冷静に議論する時期が来ている。

連載:現場からの医療改革
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文=上 昌広

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