「成長」にフォーカスし続ければ、「成功」にも近づいていく
そして、僕はベンチャー設立に参画するにあたり、こう決意していた。
「3年後に引っ張りだこのエンジニアになる」
そのベンチャー企業は僕が投資家に話した通り、3年を過ぎた頃に情勢が見えてきた。結局のところ、上手くいかなかったのだ。会社は上場できずに別の企業に吸収されることになり、当然ながらキャピタルゲインもなかった。
無念だった。しかし、文字通り泣きながら「成功」を目指して心血を注ぎ働いたことで、そのベンチャー企業が他企業の子会社となってすぐに、いくつかの会社からオファーをもらった。そのひとつがスカイプであった。
ともに頑張ってきた仲間を置いて去ることには葛藤があり寂しくもあったが、「3年間」という当初の目標通り、買収後のオペレーションが安定してきた段階で、次の「成長」のステップのためにスカイプ社に移った。そしてそこで、日本法人の代表を務めるという経験もすることができた。
そのベンチャー企業も、ネットバブルの頃だったら上場という「成功」を収めたかもしれない。このように「成功」とは、景気や競合の有無、業界の変化などの外部要因の影響を受けるため、100%自身ではコントロールできないものなのだ。
しかし、これまで話してきたように「成長」は別だ。自分が努力するならば、必ず達成できる。僕は「成功」はできなかったが、3年後に引っ張りだこのエンジニアになるという「成長」目標は叶えたのだ。
僕は、自分でコントロールできることの最たるものは自分自身の「成長」だと思っている。そして成長し、スキルや能力を身につけていくことは、その後の「成功」の確率を高めていく。僕はまだまだ自分が成功しているとは思っていないが、これまでの「成長」のおかげで有利になっていると感じたことは何度もある。
何か決断をする際には、対外的に評価を得やすい「成功」だけに目を奪われるのではなく、ぜひ自分自身の「成長」を基準に考えてみてほしい。自分さえ努力するなら確実に叶えられる「成長」に軸足を置けば、そのときリスクはゼロになる。それが、エンジニアとして生き抜いてきた僕の、今でも大切にしている指針のひとつだ。
連載:人生、気づいたもん勝ち! 先の見えない未来の歩み方
過去記事はこちら>>