寄生虫は誰か? 「パラサイト」監督が語る越えられない格差

ポン・ジュノ

寄生虫(=パラサイト)は誰か? 資本主義を痛烈に批判する、ポン・ジュノ監督の作品『パラサイト 半地下の家族』が世界的なヒットを記録している。世界の共感を呼んだ理由とは。


「半地下住宅」で暮らす全員失業中の貧乏家族と、高台の大豪邸に住むIT企業社長の金持ち家族。両極端の2つの家族が接近し、「猛烈な悲喜劇」が起こる。(作品レビューはこちら>>

激しい学歴差別やコネ社会、若者の失業といった韓国社会が抱える問題を描いているが、「最初から格差を取り上げ、社会問題を訴えようとは思っておらず、ただ周りにいそうな独特で楽しい人を描こうと思っていました」とポン・ジュノ監督は話す。

『グエルムル─漢江の怪物─』や『オクジャ/okja』など、ヒット作の多い監督だが、『パラサイト 半地下の家族』は新たな金字塔となった。カンヌ国際映画祭の最高賞に満場一致で選ばれ、ゴールデングローブ賞など各賞にノミネート。韓国で1000万人、フランスで150万人以上を動員し、全米で今年公開の外国映画の興行収入1位を記録、各国で韓国映画の興行収入記録を塗り替えた。

監督自身、このヒットは意外だったという。「韓国的なディテールやニュアンスが多く含まれた映画なので、外国人は理解しづらいかと思っていました。ところが、カンヌでもトロントでも米国でも同じ反応で、英国や台湾の友人からも『似たような話がある』『リメイクしたい』と言われました」。韓国らしい家族の話になぜ、世界が熱中するのか。

「私も気になって考えていました。私の結論は、これが各国固有の問題ではなく、我々が資本主義という一つの巨大な国家、『ワンワールド』にいるから。みんな、資本主義という一国の住人なのです」

格差を象徴する空間を描く

暗いテーマを扱っているようだが、貧乏一家のクリエイティブな一面や、実力派俳優たちのコミカルな演技など、思わず笑わせてくれる一コマが随所にある。美しい映像も圧巻だ。高台の大豪邸は、映画のためにつくられたセットだが、前の持ち主の建築家が建てたという設定の通り、モダンで美しい空間が細部にわたってつくり込まれている。

空間には特にこだわったという。スクリーンに何度も登場する階段には、深い意味が込められている。「垂直の空間を使って、階級や貧富の差を表しています。高台の豪邸は長い階段の上にあり、家の中にも階段がたくさんでてきます。階段とはつまり階層を象徴していて、上昇したり、転げ落ちたりするものです」。
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文=成相通子 写真=帆足宗弘

この記事は 「Forbes JAPAN 2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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