20年代のエネルギー産業、鍵握る3つのブレークスルー

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これからの10年、エネルギー産業を牽引していくものは何か。2020年代の幕開けとなったこの新年は、そんな長期的な予測や可能性について考えるのに良い機会だろう。過去20年を振り返ると、水圧破砕法(フラッキング)や風力、太陽光、液化天然ガスなどのブレークスルーがエネルギー産業を発展させた。では向こう10年は、何がエネルギーの生産や消費の方法を変えていくだろうか?

1. 電池技術のブレークスルー

電池技術で画期的な進歩があれば、電力のつくり方と、車から街灯、炉まで、さまざまなものへのその供給の仕方が変わるはずだ。ここ何年かで太陽光や風力による発電容量は増えたものの、電池技術に大きな変革が起こらない限り、その価値は制約されてしまうだろう。陽が差していないときや風が吹いていないときでも、太陽光発電や風力発電を頼りにできるように、そうした設備でつくり出した電気をすべて貯蔵できる方法を見つけなくてはならない。

電池技術が向上すれば、電気自動車(EV)や電動式の建機や農機の魅力も市場で高まりそうだ。そうして、太陽光や風力、原子力、水力といったクリーン技術でつくった電力によって、石油を代替できるようになっていく。従来の電池よりも、蓄えられる電力の量が大きく、劣化しにくく、軽量な電池を開発する必要がある。それらが一度に実現するのは難しいかもしれないが、電池技術の真のブレークスルーは、エネルギー分野で原子力の開発以来、最大の革新になる可能性もある。

2. 小型モジュラー炉(SMR)の普及

SMRが実用化すれば、特定の場所にクリーンに電力を供給できるようになる。従来の原発に比べるとSMRは建設費用が安く、小さな町や工場、データセンター、あるいは企業や大学の広大なキャンパスなど向けの、イノベーティブな電力供給手段として活用されそうだ。SMRはよりクリーンに電力をつくることができ、導入した地方自治体や施設は光熱費の抑制も期待できる。SMRは既に複数の企業が開発に乗り出しており、建設費用がもう少し下がり、完成時期もやや早まれば、20年代のうちにかなり普及するかもしれない。

3. 化石燃料の大規模な埋蔵の発見

石油やガス、石炭の業界は何十年にもわたって、もう大規模な埋蔵の発見はないと専門家から言われ続けてきた。最近では15年ほど前に、投資家のマシュー・シモンズが「ピークオイル」に達したと主張した。彼は間違っていた。19世紀には米大陸で巨大油田が見つかり、20世紀の最初の30年間には中東で世界最大規模の油田が発見された。その後、沖合や北極圏で油田やガス田が見つかった。次にどこで原油や天然ガス、石炭が見つかるかは誰にも分からないだろう。

化石燃料の新たな埋蔵が見つかれば、脱化石燃料という世界の願望とは裏腹に、エネルギー業界や市場に大きな影響を与えることになるだろう。大規模な埋蔵が発見されれば、化石燃料の価格は下がり、人々は化石燃料を使うように促されるからだ。新たな埋蔵の発見はまた、代替エネルギー技術への投資に冷や水を浴びせることにもなるだろう。電池や代替エネルギーへの大規模投資を妨げる最大の障害は、安価な化石燃料が潤沢にあることなのだ。

編集=江戸伸禎

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