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川村:SNSで紹介したら「いいね」が集まりそうなアイデアやネタがあるのかもしれないけど、それを溜め込んで温めて作品にしたほうが良いと思っているんです。いいなって思ったものを信じて、熟成させて、物語の形にしてから世に出したいなと。



塩田:例えばゲームは、ファンとインタラクティブに作っていく側面が強いので、ファンの反応ってありがたいんですけど、反応をどう取り入れるかはすごく重要です。反応に条件反射で当てに行っちゃうと、多分どんどんつまらなくなっていっちゃう。

反応を受けて良くなる作品と悪くなる作品の違いはそこかなと。反応を一度咀嚼して、一番いい活かし方をすることが大事なんでしょうね。

新人になれる場所を探して、ジャンルを変えてきた

塩田:それにしても元気さんは、映画・小説・アニメと幅広いジャンルを手がけていてすごいですよね。

川村:いろいろやっているように思えますが、僕のテーマは一貫してずっと「幸福論」なんです。映画だと「電車男」「告白」「モテキ」「君の名は。」、小説だと「世界から猫が消えたなら」「億男」「四月になれば彼女は」「百花」など、ジャンルがバラバラに見えるのですが、それらをすべて俯瞰で見ると、すべて幸せとは何かを考える物語だったりします。

塩田:どんな風に作品を作っていくんですか。

川村:まずは感覚から入る。感覚を、テクニックやロジックで裏付けて企画を通す。思いついたことを、多くの人に説得力が出るように補強していく感じでしょうか。

ずっと映画を作っていると、だんだん映画の勝算のようなものが見えた気になることがあるんです。10年位やるとやり方を覚えた気になる。でもそれは世間とのズレの始まりで。だから新人になれる場所を探してジャンルを変えてきたんです。実写からアニメーション、映画から小説。ジャンルを変えるたびに、毎回勉強し直しなんです。それでも新人であり続けたいと思っています。

塩田:元気さんが、もし次にゲームを作るとしたら、どんな風に作りますか?

川村:新しいジャンルに挑戦するときは、まずは「ゲームってなんだろう」って考えるところから始めます。自分の仕事は「考えて、気づくこと」だと思ってるから。よく僕は、「集合的無意識」という言葉を使うんですけど、皆が感じているけれどもまだ言葉になっていない共通の感覚が必ずあって、それを形にしたいと思っているんです。



ゲームだったら、ゲームの考え方自体から作りたいですね。競うことはゲームの基本だと思うけど、それだけだと疲れていくから、何かを少しずつ創りあげていく気持ち良い世界とセットで描きたい。ゲームの魅力である「競うこと」と「世界を作り上げていくこと」の両面が相関関係をもって交互に楽しめるものができないかなと。

塩田:全く新しい作り方ですね。わくわくするし、学びがめっちゃあります。

川村:言語化されていないけど、99%の人が共感してくれるだろうなってことは実はたくさんあると思っています。例えば、新しい手帳を買ったときに、なんで今まで使っていた手帳が急に魂が抜けたように古びて見えるのだろうとか。そんな感覚を、僕が人より少しだけ早く気づいて、物語化しているんだろうなと思うんです。

塩田:昔からなんでもうまくできていたんですか?

川村:子供の頃は、なにもうまくいかなかった記憶があります。僕は保育園も幼稚園も行っていなかったので、小学校に入学したときに、まず「こんなに子供がいるのか」って驚いた。驚きとギャップだらけで、なかなか馴染めなかったですね。でも、そのときずっと抱いていた違和感やズレが、今となっては仕事になっている。

構成=井澤梓 写真=柴崎まどか

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