ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

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保守系の新聞と革新系の新聞のバトルが、全米で注目を集めている。

人口200万人を超える都市であるラスベガスには、それぞれ長い歴史を誇る「ラスベガス・リビュージャーナル」と「ラスベガス・サン」の2紙があり、どちらも大統領選挙にも影響力を持つ有力な新聞となっている。

その2紙の間で、今回、新聞の印刷や配布をめぐって争いとなり、醜い裁判沙汰にまでエスカレートしている。

裁判の争点となっているのは「契約義務違反」なのだが、そもそも、その「契約内容」が極めて珍しい。1989年に2社が結んだ共同オペレーション契約というもので、もともと政策や選挙をめぐってもまったく論調の一致しなかった同士でありながら、2紙の印刷と配布、さらに顧客購買契約の受付や管理をひとつにまとめようというものだった。

ライバル紙の非難合戦も勃発

なぜ、こんな無茶なことが30年以上前から起きているのか。その背景には、新聞報道保護法という1970年代にできた法律がある。

大が小を呑み込み、有力な新聞がその都市に1つだけになってしまうことを避けるというのが法律の趣旨だ。簡単に言えば、新聞の「独占禁止法」だ。

これにより、発行部数で上回っていたリビュージャーナル紙は、サン紙を買収することもできないばかりか、規模の力でライバル紙を廃業に追い込むような企業行動をすれば法律違反になると警告され、なにかと慎重になっていた。

ラスベガス・リビュージャーナル紙は、数々のマフィアや政府高官の悪業を暴き、人権擁護第一を掲げてきた創刊100年を超える歴史ある新聞で、全米に1300の日刊紙が存在するなかでも、トップ25にランキングされる有力紙だ。

とくにこの半世紀は、少しでもコンプライアンスを外すとたちまち悪事の温床になりそうな、カジノ業者のような実に微妙な現金商売を、犯罪組織から守ってきた「ラスベガスの善意」という高い評価が地元にはある。実際、ネバダ州の汚職事件のほとんどは、内部事情を知る者が同紙に密告をするところから、世間は知ることになる。

なので、その「ブランド・ペーパー」が独占禁止法に触れることになってしまうのは、リビュージャーナル紙も良しとしなかった。そこで、1989年より、規模でハンディを負うラスベガス・サン紙の印刷、配布、顧客管理を、前述の共同オペレーション契約に基づいて有料で請け負ってきたのだ。

文=長野慶太

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