ビジネス

2020.01.19

ラスベガスの有力2紙が裁判で対決 「呉越同舟」の関係に亀裂

Photo by qvist / Shutterstock.com


日本でも、インターネットやSNSの台頭によって新聞はますます発行部数を減らし、ネット記事との折り合いをつける工夫をして、なんとか生き残ろうと必死だが、アメリカでも、ロサンゼルス・タイムズは中華系億万長者に身売りし、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がニューズ・コーポレーションに買収され、シカゴ・トリビューンはすでに10年前に倒産するなど、業界地図はどんどん塗り替えられている。

WSJなどは割り切ったもので、もうずいぶん前から日曜版は印刷を止め、「ウェブサイトで読んでくれ」と開き直っており、ますます紙媒体に対しては距離を置いた態度だ。

リビュージャーナル紙のオーナー一族であるシェルダン・アデルセンは、トランプ大統領に最大の献金をしたキングメーカーだ。一方、サン紙のほうも、ラスベガスの名門グリーンスパン家によって所有され、元大統領であるジミー・カーターやビル・クリントンなどの民主党とのつながりが深い。

また同じく民主党のバラク・オバマ前大統領は、長年グリーンスパン家によって支援されてきたハリー・リード上院議員(当時の民主党トップ)の尽力によって誕生したと言ってよく、その意味で、サン紙の紙媒体の発行部数は劣っても、やはりキングメーカーとしての自負がある。

アメリカの新聞は選挙が近くなると、新聞社としての推薦候補を明確に書くという面白い習慣がある。共和党ばかりを推薦するラスベガス・リビュージャーナル紙と、民主党ばかりを推薦するラスベガス・サン紙との、大統領選をめぐっての戦いぶりを見ていると、なにがなんでも声高なオーナーである「ボス」の主張の場を保持せねばならず、採算を度外視しても新聞事業を継続しなければならないようにさえ見えてしまう。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
過去記事はこちら>>

文=長野慶太

ForbesBrandVoice

人気記事