ビジネス

2020.01.20

リターンは年30%! プライベート・エクイティの若き「王者」

オーランド・ブラボー


ブラボーに飛躍のチャンスが巡ってきたのは金融危機の最中のことだった。この頃、トーマはパートナーであったブライアン・クレシーとの事業を解消し、トーマ・ブラボーを設立。それ以降、同社はソフトウェア分野のみに投資し、ブラボーがその指揮を執るようになった。

その後、セキュリティ企業ブルー・コートや金融ソフト企業デジタルインサイト、そしてプロジェクト管理ソフト企業デルテックなど、次々と10億ドル規模の買収を実施。そのどれもが、ブラボーの監督下で企業価値を倍以上に高めている。

失敗のパターンとバイアウト戦略

20年にわたってソフトウェア業界に関わってきたブラボーは、明確な「失敗のパターン」を認識するようになった。例えば、ある企業がある先駆的な製品を開発した場合、爆発的な売り上げを達成するが、その後、競合が台頭するにつれ、売り上げは決まって鈍化する。多くの場合、CEOは本業以外のビジネスに手を出したり、販売をテコ入れするためにコストをかけ過ぎたりするのだ。ブラボーはこれを、「二兎も三兎も追っている状態」と呼ぶ。

そこでブラボーと10人のパートナーは、製品ラインごとに損益計算書を調べ、契約書を読み込んで、損な取引や価格設定が低過ぎる製品を探し出す。

またブラボーらは人員整理も行う。その規模は全従業員の10%に上ることもあるが、ブラボーがそれを詫びることはない。「事業を再編成し、大規模な成長が可能な体制を整えるためには、一歩前進する前に一歩後退しなければなりません。ボクシングのようなものです」と言う。

18年に13本目のファンドのために126億ドルもの資金を調達したブラボーは、100億ドルを超える規模の取引を狙っている。これからは巨大テック企業からある事業部門を丸ごと買収することもありえるという。

だが自身の投資ファンドの成功のおかげもあり、現在では競合が増えている。長年のライバルであるビスタ・エクイティはもちろんのこと、ブラックストーンやKKRなどの大手PEファンドもソフトウェア企業の買収調査に力を入れるようになった。

それに、ブラボーもまったくミスを犯さないわけではない。15年に36億ドルで買収したデジタルパフォーマンス企業のリバーベッドテクノロジーは、最近業績不振に陥っている。売り上げが鈍化したことと、債務が膨らみ過ぎたことが原因だ。

それでもブラボーに不安は見られない。

「もっと大きく、優れていて、でも経営を改善すべき企業が、10年前よりたくさんありますから」


オーランド・ブラボー◎1970年、プエルトリコ生まれ。スタンフォードロースクールでJD、同ビジネススクールでMBA取得。97年、トーマ・ブラボーの前身となるPEファンドに入社。フォーブスの推計では個人資産は推計約30億ドル。2019年、米ビリオネアランキングで287位。

文=アントワーヌ・ガラ 翻訳=木村理恵 編集=増谷 康

この記事は 「Forbes JAPAN 1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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