「解散」前提のコミュニティを仕掛ける。異色クリエイター2人の思惑

Seihoと陳暁夏代


1人で生きていける東京の怖さ



中国出身の陳暁と大阪出身のSeihoは、東京特有の問題にも着目する。毎年人口が増え続け、地域との格差がますます開いていく一方で、「なんでも1人で完結できてしまう」リスクが伴うという。そもそもなぜそれがリスクになるのか。

それは、強制的に作られる新しい出会いを阻むからだ。地方では1人で解決できないことが多いため、人々が自然と集まる仕組みができている。一方で東京は1人で解決できてしまうか、細かく分かれたコミュニティの中で完結してしまうため、外との接触による化学反応が生まれにくくなっている。

Seihoはそれを音楽イベントでも見られる光景だという。

「大阪、福岡、名古屋では、ヒップホップをやってるイベントにテクノのDJやハウスのDJが出ることもあります。他ジャンルの人が出ないと人数が集まらないからです。でも、そこで別ジャンルが融合することで新しい空間が生まれるんですよね。東京の場合だと、テクノの中でもコミュニティが分かれていて、もっとニッチな世界になります」

このように東京は人がたくさん集まっているにもかかわらず、コミュニティの多様化ゆえ、自分のコミュニティ以外の人と出会うハードルは高いという矛盾が起きている。そこで陳暁は「人間交差点」を作りたいと思った。

別ジャンルのコミュニティを融合させることで、強制的に新しい出会いを産む。そんな空間がNOBODYだった。

「出会いの数だけ、自分の可能性があります。強制的に可能性のヒントを見つけられるような場所が東京にあると、すてきだなと思っています。そういう場所作りは、今後もやっていきたいです」

人間にはまだまだ可能性がある。その将来性を信じている陳暁とSeihoだからこそ、成立した企画だと思った。自然消滅はあれど、コミュニティを「終わらせる」ことまで見据えた企画はなかなか耳にしない。まさに、コミュニティの破壊と創造。今年最後となる、NOBODYが終わった後にどんな未来が待ち受けているのか、今から楽しみだ。

文=井土亜梨沙 写真=小田駿一

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