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これまで敏腕経営者としてのカルロス・ゴーンにまつわる本は数多く出版され、本人も多くのインタビューでも生い立ちについて語っている。ゴーンは祖父母や母親については多くを語っているが、父親についてはあまり話してこなかった。密輸、殺人、判事らの殺害計画、偽札など、その犯罪歴を考えれば、当然といえば当然だろう。

実はこのジョージ・ゴーンの悪行は今回初めて暴露されたわけではない。レバノン歌謡界の大御所で、アラブの歌姫としてアラブ諸国では知らぬ人はいない、サバハ(2014年に死去)が自叙伝に書いているのだ。サバハは日本でいう美空ひばりのような存在。彼女が自ら筆をとった自叙伝でこのことに触れているのは、かつての恋人がジョージに殺された神父だったからだ。

アラブの歌姫 Sabah の葬儀
アラブの歌姫 Sabah の葬儀の様子(Getty Images)

レバノンを見捨てた男?

今回、『逃亡者』を書いたアルノー記者は、1960年代にベイルートで発刊されていたフランス語紙L’orientに掲載されていた殺人事件の記事に着目し、そこから丹念に調査を行ったという。

親の罪は子どもとは無関係なのに、今回アラブ社会で報道された背景には、アラブ諸国でのゴーンへの厳しい見方もある。アラブ社会ではオーナー社長がワンマン経営で公私混同の好き放題をやるケースはある。ただ、ゴーンはオーナー社長ではなく、「雇われ社長のくせに何を勘違いしているんだ」という、成り上がりへのやっかみがある。

もちろん辣腕経営者として尊敬されている面もあるが、低所得者層からは「イスラエルに尻尾をふる億万長者」とか「レバノンを見捨てた男」と見られており、そうした庶民感情に応える形での暴露とも言えるだろう。

隠し続けた過去、成功、カネへの執着、元妻へのDV訴訟、そして今回の逮捕と逃亡。まるで戦後を代表する小説家、松本清張が描いてきた人間の現世欲や秘めた怨念の世界のグローバル版と言えるのではないだろうか。

文=Forbes JAPAN編集部

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