箱根を「温泉」でなく「土」で語る 自然が生み出す工芸品の魅力

箱根の工芸品「箱根寄木細工」(写真=露木木工所)


さらに箱根を鳥瞰してみます。そう、京都が左端にきて、東京が右端にくるくらいに。そうすると、京の都と江戸幕府をつないだ日本最大の街道「東海道」が、箱根を突き抜けていることがわかります。

箱根は日本最大の温泉地だったので、温泉保養を目的とした人たちが「東海道」を通じて、西からも東からも集まり、この地に温泉文化を築きました。同様に「箱根寄木細工」は、その技術を西の静岡から取り入れ、完成品は、旅人の手によって東の江戸に持ち込まれるようになりました。

スペインやトルコなどのモザイクタイルは箱根寄木細工の影響を受けているという説があります。比較的早い時代に日本を代表する芸術品のひとつとして海外貿易品としても使われるようになった時代背景を鑑みると、そうだったのかもしれません(注:現在は海外の材木も使っています)。



箱根に行ったら肌で温度を体感して

東京から箱根に行く時は、電車にしても、車にしても、車窓から見える樹木の変化にご注目いただければと思います。できるなら外気をあびて肌で気温の差も感じてみてはいかがでしょうか。そうやってたどり着いた箱根で「箱根寄木細工」を見かけたら、あのカラフルな色彩は、箱根の多様な環境が生み出した賜物だと、きっと感じていただけるかと思います。

連載:旅する“元”広報
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文=南雲朋美

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