美白クリームで水銀中毒になった米女性 気をつけるべきことは?

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水銀がそれほど有毒になり得るのであれば、一体なぜ美白クリームに含まれているのだろう? 大半の人が完全に白い肌を持たない理由はメラノサイトにある。肌の中のこの小さな細胞は、肌を暗くする色素、メラトニンを生成する。水銀塩はメラトニンの生成を止めることができるため、肌を白くすることだけが目的ならば、水銀はその目的にかなうものとも言える。

このことから水銀は、FDAが2016年に警告したように「アンチエイジング」や「美白」をうたう商品の多くに使用されるようになった。FDAはこうした商品が「米国外で生産され、米国で違法に販売されていることが多く、ラテン系やアジア系、アフリカ系、中東系のコミュニティー向け店舗で扱われることが多い。こうした商品はソーシャルメディアサイトで宣伝され、モバイルアプリを通して販売されている」と警告している。

こうした商品が違法に販売されているのは、多くの主要な規制機関から認可されていないためだ。欧州連合(EU)や多くのアフリカ諸国は、目の周囲に使用するもの以外の化粧品に水銀を使用することを禁止しているし、米国やフィリピンのFDAの水銀許容水準は1キログラムにつき1ミリグラムだ。カナダ保健省の基準はそれより若干高く、1キログラムにつき3ミリグラムだ。また、ネットやソーシャルメディアで販売されているものが全て合法とは限らず、違法である可能性もある。

それでも、美白の市場はいまだに大きい。WHOによると、アフリカのマリの女性の25%、ナイジェリアの女性の77%、セネガルの女性の27%、南アフリカの女性の35%、トーゴの女性の59%が美白商品を定期的に使っている。

また2004年の調査に基づくと、台湾・香港・マレーシア・フィリピン・韓国で美白商品を定期的に使用している女性の割合は約40%に上る。さらに、インドの皮膚製品市場のうち約61%は美白商品が占めている。もちろん、美白商品として販売されているもの全てが水銀を含むわけではないが、いまだに多くのものはそうだ。

これは、水銀を含む製品を肌に塗る人だけの問題ではない。美白商品を使っている人とタオルなどを共有した場合、水銀も共有されている可能性がある。また、水銀を含む商品は水銀を含む蒸気を生むこともあり、周囲にいる人がそれを吸い込んでしまうことも考えられる。水銀を含む蒸気は無臭になり得るので、自分が水銀を吸い込んでいることさえ気づかないかもしれない。

それから、多くの人がまるで大きなトイレやゴミ箱のように考えている「環境」がある。水銀を含む製品を塗布後に手を洗ったりシャワーを浴びたりした場合、水銀は消えてなくならない。

水銀は排水溝をへて、魚などあなたが口にする食べ物に最終的に入り込むことができる。すしも例外ではない。一部の人が水銀を含む美白商品を使っていれば、全員が使っているのと同じようなものだ。

翻訳・編集=出田静

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