50代のやる気に火をつけたKDDIの「新部署」とは

学校でのプログラミング教育の様子


2019年5月15日、KDDIは地方創生を推進する地元企業やベンチャー企業への出資を目的とした地方創生ファンドを設立し、今後5年間で約30億円の投資を実施する予定だといいます。

福井県鯖江市ではプログラミング人材育成の全国展開を。そして宮崎県日南市では、日南市で行われているビジネスプランコンテスト(日南市ローカルベンチャーピッチコンテスト)に協賛しローカルベンチャーの輩出、育成に向け支援しています。



また、全国各地にある高専(高等専門学校)との連携も進めています。高専生はテクノロジーに対して拒否反応を起こす人がおらず育ちやすいため、地域での即戦力になり得そうな人材輩出を目指しています。

なぜKDDIは地方創生にこれほど力を入れているのでしょうか。先述の松野氏に聞いてみました。

「地域でITを活かした社会課題の解決をしようとしたときに、大概、国や県の予算がついて、それで実証実験が行われます。KDDIはこうした実証実験で様々な社会課題をどうやってテクノロジーで解決できるかを明らかにすることはできますが、実際にこれを使って社会的に実装して運用していこうとする段階になると、国や県の予算はありません。

地元の経済がその費用を賄っていかなければなりませんが、そのときに東京のKDDIのような企業がやるのでは、コストがかかりすぎてしまいますし、地元のお金が東京に持っていかれてしまうことになります。これでは地域の問題をITで解決する持続可能なモデルにならないのです」

そう、地方が抱える問題は、社会課題の解決といっても東京の大手が運用すれば、結局、お金がストローのように東京に吸い込まれることになってしまう点です。IT人材は東京など大都会に集中しがちですが、その解決策が「教育」というわけです。松野氏が続けます。

「実際にこうしたテクノロジーを実装して運用していくのは、地元の企業やベンチャー企業がやっていくことで持続可能なモデルができると考えています。しかし、残念ながら多くの地域では、そうしたテクノロジーをサポートしていく企業や人材が不足しているのが実情です。KDDIではこうした企業や人材の育成から、この問題に取り組んでいくことにしたいと考えています。

また、通信事業者としてIoTや通信を利用したIT技術がビジネスの成長源となりますが、その実際の利用シーンの多くは地方で生まれます。現場のニーズを知る上でも地方創生を進めていく必要があります」
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文=竹部美樹

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