50代のやる気に火をつけたKDDIの「新部署」とは

学校でのプログラミング教育の様子

通信大手のKDDIが、2019年から長野や仙台を皮切りに地方企業やNPOと提携し、地方創生や教育事業に取り組み始めています。なぜ今、東京を離れて、地味にも見える地方とのタッグを組むのでしょうか。

実は、昨年夏には私が主宰するNPOもこう報じられました。

“福井県鯖江市で子供向けプログラミング教育を推進するNPO法人「エル・コミュニティ」とソフト会社「jig.jp」(ジグジェイピー、東京・渋谷)は、KDDIと業務提携を結んだ。KDDIが営業ネットワークや技術を使って他地域での展開を支援する。”(2019年7月24日付、日本経済新聞)

鯖江で行われているプログラミング教育のノウハウを、KDDIのネットワークを活用し全国に展開することになったのです。



前回のコラムでも書きましたが、鯖江市では2018年から全ての小中学校で「プログラミングクラブ」という形で、低価格の子ども向けパソコン「IchigoJam」(言語:BASIC)を使ってプログラミングが学べる環境をつくり、2019年9月からは小学4年生全クラスの総合学習の時間にもプログラミングを導入しています。民間で育成した講師を全小中学校に派遣し教える人材も地域で賄っています。

この地産地消の産官学連携のプログラミング教育モデルを「全国にも広げていきましょう」と、KDDIからの提案で業務提携を結びましたが、KDDIは同時期に岩手県立大学とも教育包括協定を締結し、11月27日に岩手県立大学主導により岩手県滝沢市の小学校でプログラミング模擬授業が実施されました。

2019年5月にKDDIの方々が岩手県立大学の先生と共に鯖江に来てこのプログラミング教育モデルの現場を視察。そのわずか2カ月後の7月にはパートナシップを締結し、11月に地方展開第1弾実施。現在も、KDDIの持つネットークを活かしながら、こちらが驚くような早さで各地で提案が続いています。

「プログラミング教育ノウハウをしっかり仕組み化して、全国に展開していきましょう」と提案された時、私たちがKDDI側からアドバイスをされたのは2点です。

まず、他の地域に鯖江の取り組みを知ってもらうため、これまでの流れ、取り組みを時系列化して資料に落とし込むこと。次に、講師育成講座で何を行っていて、どういうフローで講師認定され学校に派遣しているのかも整理し、誰もが分かるようにすること。

KDDI 経営戦略本部の松野茂樹副本部長に言われたことです。当たり前のことと思いませんか?

でも、講師プログラミング教育は自然に仕組み化されてしまっているため、資料に落とし込むということをしていませんでした。KDDIから打診を受け、全国展開する。この意識をもって準備することで、産官学連携プログラミング教育モデルを様々なルートでも展開できるようになりました。
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文=竹部美樹

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