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2020.02.20 10:00

コーポレート・ガバナンス改善に逆行? 外為法改正の課題と教訓


しかし、今でも、半分誤解、半分正当な理由で、ニューヨーク投資家たちの疑心暗鬼が収束していない。彼ら曰く、そもそもポートフォリオ投資とアクティビスト投資の区別は厳格にできない。取締役を送り込むのは重要な手段で、これに対して、障害を設けるのは、コーポレート・ガバナンス強化に逆行する。「安全保障上重要な企業」とはどれかが明示されていない、と反発している。

これに対して財務省は、「役員に就任しない」「事業の譲渡・廃止等を提案しない」は、これらは「安全保障上重要な日本企業」の株式を取得し、届け出免除を受ける場合だけに適用されるとしている。また、どの企業が「安全保障上重要な日本企業」なのかは、今後公表する、としている。どのようなファンドがどのような企業に投資するときに、事前審査が必要になるかは、今後次第に明らかになっていくだろう。

ただ、この騒動からの教訓は、外為法改正案が拙速に準備された、ということだろう。このような、誤解を孕む可能性のある法律の起案に関しては、政令や省令で定められるような細部まで先に詰めておくことが重要だ、ということだ。とくに、コーポレート・ガバナンス強化を政策の柱としている以上、この方針が大転換されるという印象を与えたのは、まずかった。

今後の課題だが、安全保障上重要な企業の個別名の公表は容易ではないだろう。一つの企業で、たとえば、原子力と(消費者向け)電機も二つの事業部をもっているような会社は安全保障上重要な企業に指定されるのかどうか。さらに、国営企業には明示的に届け出義務は発生するとしているが、年金基金や国家ファンド(SWF)は国営企業とみなされるのか、どうか。このように、財務省の努力にもかかわらず疑心暗鬼は解消されていない。

文=伊藤隆敏

この記事は 「Forbes JAPAN 1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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