「ゴーン会見は80点」の理由。日本の司法当局の発信に遅れ

レバノンで会見したカルロス・ゴーン被告(Getty Images)


2. 日産幹部による「クーデター」を主張。日本政府関係者の名前は挙げず

そもそもゴーン被告がなぜ、逮捕、起訴されたか、皆さんは覚えているだろうか。中東の知人に資金を流出させるなどとして会社法違反(特別背任)の罪と、役員報酬の未払い分約91億円を有価証券報告書に記載せず、金融商品取引法違反の2つの罪で起訴されたのだ。これについてゴーン被告は、自身が無実であることを示す「証拠」とした日産内部の文書などをスクリーンに映し出しながらプレゼンテーションのようにして、自らの潔白を主張した。

また、日産幹部が組織的なクーデターを起こした2つの理由として、2017年日産の業績の低迷を受けて「変化」が必要だった、そしてルノーの影響力を無くすために自分を退かせたと語った。

日産関係者として、西川広人前社長兼CEO、川口均元副社長のほか、専務執行役員、元監査役、元秘書室長、社外取締役の6人の名前を挙げた。

会見前に、この「画策」に加わったという日本政府関係者の実名を挙げられる可能性がささやかれていたが「私はレバノンを尊重し、両国の緊張関係を起こしてはいけない」として挙げなかった。

3.「箱」の中に入った気持ちは……

会見では逃走の方法や詳細こそ明らかにしなかったが、記者からの質問を受けて自分の思いを口走った。

「ドラマのような国外脱出でした。箱の中に入ったときの気持ちは?」と記者から聞かれると、ゴーン被告は「2018年11月以降、再び妻と初めて会うまで無感覚でした。感情を抱くことは非常に心配でした。一方で期待もありました。ですが悪夢の中で13カ月を過ごし、12月30日に妻の顔を見るまでは無感覚でした」と答えた。

カルロス・ゴーン
2019年4月には、法律事務所を通じて無実を訴える動画を発表していた (Getty Images)

日本司法当局も緊急対応したが

ゴーン被告の会見を受け、森雅子法務大臣は9日未明、臨時の記者会見を開き、被告の主張に対して「多くが抽象的で趣旨が判然としなかった。これらの主張でゴーン被告の国外逃亡は正当化されない」とメッセージを発信した。また東京地検特捜部も9日、次のようなコメント文を日本語と英語で発表し、反論した。

「被告人ゴーンは、犯罪に当たり得る行為をしてまで国外逃亡したものであり、会見も自らの行為を不当に正当化するものにすぎない。ゴーンが約130日間に渡って逮捕・拘留され、また保釈指定条件において妻らとの接触が制限されたのは、高度の逃亡のおそれが認められたことや、妻を通じて罪証隠滅行為を行ってきたことを原因とするもので、被告人ゴーン自身の責任に帰着するものである。一方的に我が国の刑事司法制度を避難する主張は、不当におとしめるものであって到底受け入れられない(後半略)」

今後は東京地検として、ゴーン被告が日本で裁判を受けるように関係機関と連携して「できる限りの手段を講じる所存である」と締めくくった。

これに対して舛添氏はさらにツイッターで「日本の司法制度を踏みにじり逃走したゴーンを日本人が批判するのは当然だ。しかし、相手は世界の世論である」として、東京地検に対して「相手は日本以外の海外だという認識が必要である」と注文をつけた。続けて、舛添氏は森法務大臣の会見についても、海外メディアを集めて英語で質疑応答する必要性を論じている。

ゴーン被告の逃亡劇は、いつ終幕を迎えるのだろうか。私たちは、「茶番」では済まされない、国際事件の動向を注視しつつ、日本司法当局が今回のような逃亡をどう防ぐのかウオッチしていく必要があるだろう。

文=督あかり

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