今年の春、日本に上陸するアメリカ伝統の高級ブランドの新SUVは、どこまで戦えるか探ってみよう。
外観は予想していたよりきれいな仕上がりで、キャデラックなりの品を感じる。長細いヘッドライトと保守的なグリルのマリアージュは、このSUVに合っている気がする。スポーツ仕様とラグシュアリー仕様の2スタイルがオファーされているけど、昨年末にロサンゼルスの試乗会では、スポーツ仕様に乗ってみた。
内装は高級感があり、シートのレイアウトはなかなか良い。レッグルームたっぷりの2列目のシートがリクライニング機能を持っているので、自分にぴったりと角度を見つけられる。これは気に入った。
2列目から簡単にアクセスできる3列目のシートには、身長175cmでもちゃんと収まる。それに、ラゲージスペースの壁にあるスイッチを押すと、まず3列目、続いて2列目のシートの背が順に倒れてフルフラットに変わるので楽チンだ。センターコンソールやドアポケットなどの収納スペースも十分と言える。
また、USBポートは6つもあって、家族全員が喧嘩せず問題なくデバイスの充電ができる。標準の8インチのタッチスクリーンは使いやすく、アップル・カープレイとアンドロイド・オートも完備。8スピーカーのボーズ製オーディオの音質は重厚で聞きやすいし、8方向のパワー付き前席も標準装備なので、各自の姿勢に合わせられる。
僕が乗ったアメリカ仕様には、ワイヤレスの携帯チャージ機能も付いていたけど、日本仕様にもつくかどうかはわからない。オプションとして夜間ビジョンとアダプティブ・クルーズ・コントロールが付いていたが、これは日本仕様に標準装備となるかもしれない。
--{前輪駆動になる「ツアーモード」も搭載}--
さて、走りはどうか? 僕が乗った4WD付きのスポーツ仕様は、走りがしっかりしているし、パワー感は文句ないけど、トルクステアが多少気になった。
「えっ、でも、その仕様には4WDが付いているでしょう?」と思う読者がいるはずだ。実はセンターコンソールに付いているノブが「ツアーモード」になっていると、4WDが前輪駆動に変わるので、駆動力は100%前輪に送られる。確かに、ツアーモードで走行すると燃費が良くなるけど、急加速した場合に、ハンドルが持って行かれるトルクステアを経験した。
XT6には、デュアルクラッチの4WDシステムに、アクティブ・ヨー・コントロールが付いている。また、スポーツ仕様はラグシュアリー仕様よりも、ステアリングのギア比がクイック。僕が試したスポーツ仕様のステアリングは多少軽すぎると思ったけど、やはり狭いパーキングで大型SUVを回すには、軽い方が良い気もする。
310馬力と367Nmを発生する3.6リッターのV6エンジンは力強く、2000回転からのトルクは十分太い。パワー不足を覚えることは一回もなかった。また、9速A/Tとのマッチングもよく、変速がスムーズでシフトショックは全く感じない。コーナーでは多少ロールするけど、非常に安定したハンドリングには関心した。乗り心地は静かでしなやかなフィーリングで、さすがキャデラックだ。
XT6は、パワー的にはレクサスGXのV8と同様の加速性をもつ。X7やQ7の走りには少し劣るが、静粛性や質感はレクサス並みと言える。この高級クラスになると、走りやパワーよりも、そのクルマのブランドイメージが物をいう。この品の良いアメリカ人と付き合うか否かは、あなたに任せる。
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