中国の消費者物価指数(CPI)は2019年11月、豚肉価格が前年比110%上昇した影響を受け、およそ8年ぶりの高い伸び率を記録した。また、中国農業大学の動物科学技術学院の研究者によれば、ASFの流行による直接的な損失額は、1400億ドル(約15兆3300億円)を超えるとみられている。
中国農業部畜産局は昨年12月に入り、飼育頭数は増加に転じたと発表。豚肉価格の急騰には歯止めがかけられるとの通しを示した。だが、専門家らは、同国の養豚業が今回の危機から脱するには、数年がかかると予想している。
輸入への依存度が上昇
米中両国は昨年12月、貿易戦争の収束に向けた「第1段階の合意」に達した。これを受けて中国は、米国からの農産物の購入を拡大すると約束している。
香港の金融サービス会社ガヴェカル(Gavekal)によると、中国の豚肉の輸入量は昨年、前年の2倍に近い200万トン以上に達したとみられる。中国は2018年に米国産豚肉の関税を62%に引き上げたが、それでもASFの影響がない同国からの輸入量は増加。中国は昨年9月、米国に和解に向けた姿勢を示すためとして、報復関税を撤廃していた。
この機に中国への豚肉の輸出量を増やしたいと考えているのは、米国だけではない。欧州委員会のフィル・ホーガン委員(農業・農村開発担当)は昨年11月に中国で行った記者会見で、EUは中国で大幅に不足している豚肉の供給量を補うことに「関心持っている」と発言している。
オランダの調査会社ラボリサーチのシニアアナリストは、「欧州やカナダ、ブラジルの輸出業者の間での競争は激しい。中国の輸入業者も交渉に長けていることから、各国からの中国の購入量は、不安定な状態が続くことになるだろう」との見方を示している。