ビジネス

2020.01.09

ウォルマートの脅威になるか、アマゾンの生鮮食品分野進出

syc011 / Shutterstock.com


これまで、顧客体験に関するアマゾンの約束は、同社のバリュー・プロポジション(顧客に提供する中心的価値)、すなわち低価格と利便性が中心となっていた。しかし、生鮮食品は必ずしもそのモデルになじむとは限らない。生鮮食品には不確定要素が存在している。それは、自分が食べ、家族に食べさせる食品との個人的な結びつきによって影響を受ける。

人は、買おうとする食品に触れ、感触を確かめ、ときには匂いを嗅ぎたいと思うものだが、それだけではない。人間というものは、変化を信用しない。生存に必要なものに関しては、特にそうだ。

思い出してほしい。いつも行くスーパーマーケットで、ある商品カテゴリーの場所が移動していたり、ある商品の販売が打ち切られたりしているのに気づいたら、落ちつかない気持ちにならないだろうか。それがさらに、人間の顔が介在しないオンラインショッピングで食品を買うとなったらどうだろうか。

ただし、顧客の習慣や、生鮮食品に関する感情的つながりを変えることは不可能なわけではない。米食品マーケティング協会(FMI)によれば、アメリカのオンライン生鮮食品市場は、今後数年で毎年17%以上成長し、2025年までに1000億ドル規模に達するという。2桁成長の余地がまだまだあるというわけだ。

だが、その進行スピードは、アマゾンの期待よりもはるかに遅い。そしてその進行の遅さが、この競争における絶対的な利点をウォルマートに与えている。

生鮮食品の売上は、アメリカにおけるウォルマートの年間売上の56%を占めている。オンラインで注文した商品を店頭で受け取れる新たなピックアップサービスも、オンラインセールスの増加に貢献している。

2017年に3億1000万ドルでウォルマートに買収されたメンズウェア・サイト「ボノボス(Bonobos)」の創業者で、これまでウォルマートのデジタルコンシューマーブランドSVPを務めてきたアンディ・ダンも、ウォルマートから去ることを明らかにした2019年12月の声明文のなかでその点に言及している。ダンによれば、ウォルマート時代に得た貴重なビジネス上の教訓のなかでも、生鮮食品カテゴリーにおける実店舗の役割を知ったことは特に大きかったという。

「オンライン注文した生鮮食品のピックアップサービスの勢いは、私の目を開かせた。数千店にのぼるウォルマート・スーパーセンターは、ほかのどんな会社も持っていない資産なのだから、それを活用しようではないか」とダンは書いている。

実際、ウォルマートの店舗基盤は、アマゾンに対抗するための最強の武器になっている。ウォルマートはすでにアメリカ最大の生鮮食品販売業者であり、オンラインと実店舗を組みあわせたサービスを提供できることが強みになっている。顧客の習慣を変えるのは、すでにある習慣を足場にするよりもはるかに難しいことなのだ。

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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