旅行業界はこれまでの10年間で、目覚ましい変化を遂げてきた。ネットワークによって世界の結びつきが強まった一方で、責任あるツーリズム(レスポンシブル・ツーリズム)という考え方が誕生したのだ。
人々は現在、「グリーン・トラベル」をしきりに話題にしている。また、航空会社が炭素排出量を削減あるいはゼロにするべくカーボン・オフセットに取り組み始めたり、ホテルが小型ペットボトルの使用を差し控えるようになったりと、企業も状況を認識し始めたようだ。ソーシャルメディアのインフルエンサーは、風光明媚な観光地のオーバーツーリズムを改善しようと、あまり目立たない平凡な場所で撮影した画像を投稿するようになっている。
こうした傾向のうち、2020年になって定着していくのはどれだろうか。専門家の意見やデータ分析を参考に筆者が予測した、2020年の旅行業界における4大トレンドを紹介しよう。
1.ハイエンドな旅行体験には、持続可能性が不可欠となる
ホテルや航空会社はいま、環境に優しい取り組みに力を入れており、グリーン・トラベルは今後もより大きなトレンドとなっていくだろう。旅行業界にはやるべきことが山積しており、特に使い捨てプラスチックに関しては、最も有害な業界のひとつだという声が上がっている。とはいえ、正しい方向へと一歩を踏み出しているのも事実だ。
米ホテルチェーン大手のマリオット・インターナショナル(Marriott International)は、使い捨てを前提にしたミニボトル容器でのアメニティ提供を廃止すると発表した。アラブ首長国連邦のドバイにある空港では、2020年末までに使い捨てプラスチックの使用が完全に禁止される。このように、グリーン・トラベルは拡大していくだろう。
また、ハイエンドの旅行体験について言えば、ごみの排出ゼロと、二酸化炭素の排出を相殺するカーボンニュートラルの達成が業界標準となるだろう。太陽エネルギーなどの分野における技術開発と、環境保護に対する消費者の関心向上のおかげで、2020年には、贅沢な旅行が必ずしも、無駄が多くて破壊的というわけではなくなるだろう。
2.あまり知られていない穴場の観光地に注目が集まる
ソーシャルメディアのフィードを埋め尽くすのは引き続き、インドネシアのバリ島をはじめとした一部の人気観光地になるだろう。その一方で、さほど知られていない場所を訪れる、いわゆる「セカンド・シティ観光」も増えるだろう。
旅行者たちは、人ごみを避けたい気持ちに加えて、旅行代金を節約したいという理由もあって、通常の観光ルートから少し外れた場所に足を運ぶことの利点に気づき始めている。
それを裏づける数字もある。旅行予約サイト「ブッキング・ドットコム(Booking.com)」によれば、世界全体の旅行者の54%は、オーバーツーリズムの削減に役立ちたいと考えている。また51%は、似通っているけれども比較的知名度が低い場所に、旅先を変更してもいいと回答した。
いずれにせよ2020年には、観光客が少ない場所に向かう旅行者が増えそうだ。