世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

アナログ・デバイセズ オートモーティブ・シニアディレクター 畠山竜声

私たちを取り巻く環境のデジタル化は加速する一方だ。中でも自動車業界は、電気自動車(EV)や自動運転など、100年に一度の大変革とも言われる「モビリティ革命」の真っ只中にある。

快適性、利便性を追求して多様な移動手段のサービスを用いるモビリティの分野では、AIやIoTといった技術を活用したデジタル化が進む。そうしたデジタル技術を制御するのに欠かせないのが、車載半導体だ。

半導体製造の第一人者、アナログ・デバイセズでは、モビリティの分野でも様々なイノベーションを生み出してきた。モビリティ技術の進化において、半導体はどのような役割を担っているのだろうか。同社のモビリティ部門を担うオートモーティブ・シニアディレクターの畠山竜声に聞いた。


ロボット化していくクルマとそれを使いこなす人間とをつなぐアナログ技術

「車には、100個以上の電子機器が搭載されています。その機器を制御する、電子制御と呼ばれる機体にはすべて半導体が関わっています」と畠山は説明する。

「例えば、電源マネージメント。車の電子機器に電気を供給するシステムですが、効率良く、かつ多数の機器同士が干渉しあわないよう制御する必要があります。その電源マネージメントICに、アナログ・デバイセズの技術が採用されています。他には、カーオーディオの制御。車種によって音の演出方法が違いますので、顧客のニーズに沿った音を出す制御ICにも、弊社の技術が使われているのです」

スムーズに電子機器へ電気を供給する、車内でいかに心地よい音楽を流す──半導体による制御技術は、効率良く、快適に車に乗るための縁の下の力持ちと言える。

さらに、アナログ・デバイセズは車に搭載するケーブルを削減することで燃費が向上する独自のテクノロジーも担っている。「A2B®」(オートモーティブ・オーディオ・バス)と呼ばれるシステムだ。

オーディオ機器にはスピーカーやマイクロフォンなどに数多くのケーブルが使用され、車の重量に影響を与える。しかしA2B®の技術を使うと1本のケーブルにまとめられ、軽量化につながるのだ。


A2B®は高帯域幅の双方向デジタル・オーディオ・バスになっており、ケーブル重量を軽減することによって燃費を損なうことなく、ハイファイ・オーディオを実現可能とする。

また、A2B®の技術で音声認識や、車室内の騒音を抑えるノイズ・キャンセリングなど、複数のセンサーのアプリケーションをまとめることができるのも特長だ。

「例えば、車を走らせていると、風切り音やタイヤから伝わる道路の振動音など、意外とノイズが多くなります。もともと車のドアの中にはたくさんの吸音材がつまっています。車一台分にすると吸音材は意外と重量があります。これを軽量化するため、ヘッドホンなどに採用されているノイズキャンセレーション技術に着目し、モビリティへの転用を始めた。ヘッドホンとは異なる車内という広い空間で、クラクションや救急車、車内での会話音は残しつつ、周囲の余計な音を消す技術を向上させてきました」

ただし、たくさんのセンサーや機器をつなぐとそれだけケーブルが増えて重量が増す。そこで、この車用の重いケーブルを軽量化できないか、という『A2B®』のアイデアが生まれたと畠山は言う。

「簡潔に言えば、A2B®は"モノをつなぐインターフェース"の役割を持っています。ノイズキャンセレーションは、ノイズに対して逆相の波形の音で打ち消す仕組み。A2B®は、ノイズに対応した打ち消し音を出す際に最も遅延が少なく、かつ安定した技術なのです。こうした技術で車両の軽量化が進めば、電気自動車(EV)であれば走行距離が伸び、ガソリン車であれば燃費が抑えられる。私たちがモビリティの分野で担うのは、車の快適さと、車の燃費や走行距離、両方のメリットを実現するテクノロジーなのです」

多様化していく「自動運転」のニーズ

モビリティでアナログ・デバイセズが持つ強力な技術がもうひとつある。それは、自動運転の性能向上に寄与する「Drive360™システム」だ。このDrive360™システムは、車の周囲を広範囲に検知するセンサーの役割を果たす。車の周囲のどの部分を検知するか、また、天候や条件などにより最適なセンサーが変わってくるので、それぞれに適したセンサーをラインナップしている。

最もよく知られているのがミリ波レーダーだ。衝突回避のためにカメラとの組み合わせで一般化している技術ではあるが、なるべく長い距離先の障害物を検知したり、障害物の大きさや形を検知するためには、より高精度で電波を出し、反射波を高速に解析する必要が生じる。そのための高周波技術を持つ、世界で数少ないメーカーがアナログ・デバイセズである。

「以前は『自動運転=夢の車』というイメージでしたが、自動運転が現実的になるにつれ、課題が明確になってきました」と畠山は話す。

例えば、物流トラックの人手不足を解消する、過疎地域でお年寄りが移動する、都市部でシェアカーを利用するなど、自動運転へのニーズは多種多様だ。事故が起こらないように制御するという原則は抑えつつ、どのように制御するかは自動運転の用途により異なってくる。

「これまでは『自動運転は運転手がいないのだから、人をモニターする必要はない』と言われてきました。しかし、過疎地域でお年寄りを病院に運ぶ自動運転の場合を想定すると、状況は変わってきます。お年寄りがどういう状況なのか、心拍数など健康状態のモニタリングが重要になるのです。他にも、車内に置き去りにされた子どもの死亡事故対策として、車内をモニタリングできれば、危険を察知し、車外に知らせることができます」

技術が進化するにつれ、運転だけではなく新たな技術が車に求められてくると、畠山は考えている。

「前述のミリ波レーダーは車外をモニターする技術ですが、似た技術を車内に用いることで、レーダーで心拍数や呼吸数を非接触で測れるため、先述のように車内にいる人の健康状態を察知し、危険があれば行き先を病院に変更するという自動運転が可能になります。アナログ・デバイセズではこうした電波の送受信技術を長年に渡り培ってきましたので、こうしたアプローチでモビリティ技術に取り入れる試みを続けています」


Drive360™はレーダー・LIDAR・慣性MEMSの技術ポートフォリオを統合した、クルマの周囲360°を高精度にセンシングするためのプラットフォームである。



「課題の先にある課題」を解決する技術を求めて

技術が進むほど、課題は明確になっていく。数年先を見据えたモノづくりは、アナログ・デバイセズ社を支える理念のひとつだ。

「自動車の開発には、技術開発から販売に至るまで4〜5年の長い時間がかかります。また、一度販売が始まると10年以上先までメンテナンスも必要です。つまり、弊社の製品を開発する段階で、数年あるいは数十年先の未来を予測する必要があります。自動車業界が『100年に一度の変革』を迎えている今、社会情勢や自動車業界の動きを注視し、先を見据えた技術開発が求められるのです」

アナログ・デバイセズが掲げる理念の一つとして、「AHEAD OF WHAT’S POSSIBLE(想像を超える可能性を)」がある。畠山はその理念についてこう解説する。

「誰もが想像できるものを作り出すのは当然のことで、想像を超え、人びとが『えっ』と驚く何かを作り出すことが、弊社におけるモノづくりの哲学になっています」

アナログ・デバイセズのテクノロジーは、2016年に競合関係にあったリニアテクノロジーとの統合でさらなる進化を遂げた。「リニアテクノロジーとは、互いに競争相手で切磋琢磨してきました。同じ技術を違う方向に発展させてきた2社が統合したことで、結果、より大きな広がりを持てるようになったのです」

アナログとデジタルが補い合って作り出す未来

アナログ・デバイセズのテクノロジーは今後、近未来の社会をどのように変革していくのだろうか。

「弊社は、モビリティだけでなく、5G通信のインフラにも高い技術力を持っています。そして、ヒトの心拍や呼吸数等のモニタリング技術もあります。将来、モビリティ、通信、ヘルスケアの分野がつながり、クラウドにデータを蓄積し、コントロールできるようになるでしょう」

こうしたデジタルの進化には、アナログの存在なくして語れないと、畠山は力を込めて語る。

「デジタル技術が進化して世界は便利になっていきますが、人間を取り巻く自然界はアナログです。自動運転やAIの活用といった最先端の技術を人間が快適に享受していくためには最先端のアナログ技術が不可欠です。それを提供するのがアナログ・デバイセズなのです。デジタルとアナログが共存する、ワクワクするような未来。そこにはアナログ・デバイセズの技術がなくてはならないと自負しています」

アナログとデジタル、それらは対立するものではなく補完し合うもの──先端技術を担うアナログ・デバイセズのテクノロジーには、そんなモノづくりの哲学が込められている。


アナログ・デバイセズ オートモーティブ

Promoted by アナログ・デバイセズ / text by Nanae Ito / photographs by Johnny Terasaka

あなたにおすすめ