「STAR ISLAND」日本発、シンガポールで50万人が熱狂。スター不在でもウケる理由

日本の花火とドローン、パフォーマンスがシンガポールのカウントダウンをジャックした(写真=小田駿一)


感性をジャック。360度、五感で没入する100分間


始まったが最後、360度、全方位からの刺激の嵐。否応なくあらゆる感性をジャックされ、これまでにない没入感を味わえた約100分間だった。

会場はマリーナ・ベイに浮かぶ競技場「ザ・フロート@マリーナ・ベイ」。雨の予報が出ていたものの、天候も味方につけ好天の中開催された。

レーザー・ライティングが天に突き刺さる。ステージでは40人超のパフォーマーたちが圧巻のステージを繰り広げる。スクリーンには合わせ鏡のような奥行きのある映像が流れ、ライブ感を演出。エイベックスの本領を発揮した。

”キング・オブ・ポップ”マイケル・ジャクソン、アヴィーチー、DJデオロ、エクソジェネシス交響曲……。ポップ、ロック、ダンスミュージックからクラシックまで、どこまでもタイムレスでピースフルな3Dサウンドが最高の音質で脳内に響く。

空中ではマリーナ・ベイ・サンズをバックに日本の伝統花火が惜しみなく打ち上げられ、完璧に制御されたドローンがシンガポールの夜空を自在に描いた。


Shunichi Oda

二度とないこの光景を写真や動画で収めようと観客がスマホを構えるたびに、腕に巻かれたリストバンドがシーンに呼応して光る様子は、夜空に浮かぶ島に散りばめた星のようだった。

スターアイランド シンガポール STAR ISLAND
PR事務局提供

光も音楽も、ステージも、花火も、ドローンも、マリーナ・ベイの夜景も、風や火薬の匂いすらも全てがマッチし、2020年代の幕開けを祝っていた。

国籍も世代も問わない、言葉もいらない。もしかしたら「STAR」は、このリアルな瞬間を共有する主役である観客を指すのかもしれない。ただあの場にいるだけで、誰もが没入できるエンターテインメントだった。まさにこの点こそが、STAR ISLANDが世界に評価される理由なのではないだろうか。

圧倒的ライブ感。日本の花火に涙

イタリアから訪れたカップルは途中から写真を撮ることを忘れ、感激のあまり涙していた。特に日本の花火の質の高さと豪華さに圧倒されたのだという。

夜空に咲き、ほどなく散る。花火ほどライブに映えるコンテンツはないのではないだろうか。確かに海外の一般的な花火とは全くの別物だった。

ドン。ドン。腹の底に響く低音、その音の重厚さ、発色の鮮やかさと色の変化、そして燃えながら輝き続ける一粒一粒の光の長さ。世界が絶賛する、日本の花火の質を体感することができた。日本屈指の老舗花火屋「丸玉屋小勝煙火店」、「紅屋青木煙火店」、「マルゴー」が手掛けた。

静かに1発ずつを楽しむ日本の夏の花火大会に比べ、圧倒的に打ち上がるペースが速く、打ち上げ数が多い。しかも、音楽やショーのテンポ、ストーリーと完全にリンクしている。

花開いてからレインボーのように光の色が変わるものや、炎のように下から上に燃え上がってゆくような軌跡を描くものなど、日本の職人の技術力を裏付ける斬新な花火も観客を驚かせていた。
次ページ > アナログとデジタルを超えた新境地

文=林亜季、写真=小田駿一

ForbesBrandVoice

人気記事