・学生ローンの膨張を受けて高等教育が目覚ましい変化を遂げる。
国民が高等教育制度の肥大に関心を高め、大学が学生ローンの一部を負担せざるを得なくなっていくことで、学費の高騰に終止符が打たれる。それに伴い、卒業率の低さも改善するかもしれない。ミッチ・ダニエルズが2013年に学長に就任して以来、学生の負担額が減っているパデュー大学は、この点でパイオニアと言えそうだ。
若者の間では、高校卒業後、無理に大学に進学しなくてもよいと感じる人が多くなり、そうした人たちは代わりに、人手不足の業種の報酬の良い仕事を探すようになるだろう。大学などのオンライン講座があるおかげで、若者は高等教育は受けたいと思ったときに受けるようになっていくと思われる。
もちろん、危機や難題も待ち構えている。
・米国の政治を揺るがすような問題がいくつも生じる。
現時点でも、気候政策、アイデンティティー・ポリティクス、大学キャンパスにおける言論の自由、増え続ける出所者をどうやってもっとうまく社会復帰させるか、といった問題が山積している。20年の選挙は、米国がこれからどんな国になるかについての重大な議論の始まりになるだろう。
・「監視国家」の台頭による懸念に比べれば、プライバシーを巡る現在の懸念はかすんでくる。
中国ではもうすぐ、人々のどんな場所のどんな行動もすべて記録され、永久に保存されるようになる。それよりは自由な国々でも、人々はやはり日々の行動を今以上に記録されるようになるに違いない。それに応じて、あらゆるところにある極小のカメラを妨害できる機器などの成熟した市場も生まれてくるだろう。
・多様で多文化の国家としてのインドが、ヒンドゥー・ナショナリズムの高まりの中でも一体性を保っていけるか、世界は目撃することになる。
もしうまくいかなければ、世界に累が及ぶだろう。
・米国民が麻薬の使用を減らす抜本的な対策を見つけなければ、メキシコで麻薬王の支配する領域が広がる。
・風力や太陽光の活用が広がっているにもかかわらず、中国やインドをはじめとする途上国で車が大量に販売されるため、化石燃料の世界消費量は大幅に増える。
ハイテク分野で極めて大きなブレークスルーがない限り、電力の大部分は引き続き化石燃料によって生み出されるだろう。もっとも、世界が常に予想できないものである以上、そうしたブレークスルーが起こらないとも限らない。
結論を言えば、こうした予測もきっと、現実の出来事によってたちまち色あせてしまうだろう。