現代の「神話」としてのスター・ウォーズを読み解く

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「おわったー」「42年間ありがとう」

シリーズ完結作となる「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」の公開が年末に始まると、いち早く劇場に足を運んだ人たちのため息がネットに流れ、この作品の意味を読み解こうとするさまざまな声が渦巻いた。

コンピューターゲーム時代の映像

ファンを気取るわけではないが、1978年6月24日、夜勤明けの有楽町で隣にある日劇に飛び込んだことを思い出した。「スター・ウォーズ」というとてつもないSF映画が公開されるというので、本邦初日(米国では前年)に見ておかなくてはと思ったのだ。

生まれて初めて観た映画が「ゴジラ」で、またその直後に世界初の人工衛星スプートニクが打ち上げられ、1960年代にはアポロ計画が始まって米・ソの宇宙開発競争が激化したせいで、宇宙を題材としたSF映画も多く作られたが、この作品の前評判にただならぬものを感じていたからだろう。

公開当初は、ジョージ・ルーカス監督が神話学者ジョセフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』を参考に、この本が世界の神話を9つに分類していることから全体を9つのエピソードに分けたシリーズになり、この作品がエピソード4であることは知られていなかった(2作目以降を作れるかは、この作品の成績次第だった)。

そして物語の筋や中身よりも、大団円のデス・スターの表面すれすれを猛スピードで小さな排気口に向かって、主役のルーク・スカイウォーカーの乗ったXウイング機が突入するスピード感あふれるアクション映像ばかりが注目された。それはそれまでのSF映画にはない、自らが操縦席に座って飛び回るコンピューターのシューティング・ゲームのような視点で描かれていた。

当時はアップルのパソコンや家庭用テレビゲーム機が出始めており、その雰囲気をそのまま実写したような迫力のある映像が若者にも親近感を持って受け入れられたのだろうし、その年にはゲームセンターでスペース・インベーダーが登場し一大ブームを引き起こすことになる。

同じ頃にパソコン雑誌が出始めていたが、それらには新製品やゲームのプログラミングの話題と一緒に、パソコンが生活に浸透して、いずれ宇宙でも活躍するという夢が各所で語られていた。そこには、企業の管理する大型コンピューターに人が仕えるのではなく、個人が使えるパソコンという道具で、新しいライフスタイルを開拓したいという希望があふれていた。

つまりパソコンとはテクノロジーというより、それによってもたらされる未来の代名詞だったのだ。そういう意味で、スター・ウォーズは当時の時代の雰囲気を代弁しており、情報化がもたらすだろう時代への期待感を、誰もが共有する大きな物語として示したものだったし、それからのデジタルやネットのトレンドに寄り添うようにシリーズ化されていった。
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文=服部 桂

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