現代の「神話」としてのスター・ウォーズを読み解く

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そう考えていくと、スター・ウォーズという長編シリーズとしての作品が、単なるハリウッドのヒット作というより、テクノロジー万能の合理化された現代という時代を読み解くための、聖書のような役割を果たしているのではないかとさえ思えてくる。

スター・ウォーズ
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第1作で登場するアナキンはキリストのように父親が不明な存在だし、天使の象徴のようなジェダイの騎士が悪魔のようなダース・ベーダーに転身する話も聖書の物語そのものだ。またダークサイドとジェダイ騎士団のフォースによる戦いは、古代からの善と悪の戦いではあるが、テクノロジーという悪に立ち向かう人間性を唱えるものであり、核というテクノロジーがもたらした東西冷戦により、世界が滅亡の恐怖に怯える時代であったからこそ、強いリアリティーを持つものだった。

はるかに文明の進んだ未来のように見えるこの物語は、実は遠い過去の話として設定され、まるで人類の古代からの歴史観をOSとして、現代の世界の現在を共有するアプリとしての物語を描くことで、時代が求めたものが結果的にこの作品に結実したのではないかと考えることさえできる。

デジタル化やネット化が進む現在は、19世紀末のメディア革命の時代のように、世界認識の手法が大きく変わり、われわれの生活感や人生観も大きく変化しつつある。そうした混乱の時代には、拠り所となる大きな物語がいつも求められ、混乱や戦いを生き抜いたヒーローの物語が一つの原型として参照され、人々にビジョンや勇気を与えてくれるのだろう。

しかし男性原理が支配的だった時代のヒーロー神話は、現在のネットでソーシャル化した時代には多様性に席を譲り、1月13日まで東京の天王洲アイルで開催されている「スター・ウォーズ展」では、参加者を宇宙人にたとえて宇宙規模のアイデンティティーを問う展示が行われていた。次に求められている物語とは何なのか?

完結したスター・ウォーズの次は、また続編復活なのか、AIやIoT、シンギュラリティーという新たな神話なのかは分からないが、そろそろテクノロジーの進化ばかりでなく、これからのポストIT時代の神話としての物語について、もっと違う視点から論議をしてもいいのではないだろうか。

文=服部 桂

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