政治の影響を受けやすい日本のインバウンドの問題点を指摘する

日韓間を韓国系8社のエアラインが結んでおり、減便や運休の影響は経営悪化にもつながっていると聞く


同様に、政治が観光に影響を与えるのが中国である。なかでも震災後数年間の訪日中国人の動きは興味深い。震災直後の2011年5月に日本で開かれた日中韓サミットでは、会議の前日、中韓両国首脳は被災地に足を運び、日本の復興支援を表明した。

その後、韓国とは異なり、訪日中国人は2012年に震災前年の水準にまで回復したが、2013年に再びマイナス(同7.8%減)となった。理由ははっきりしている。2012年9月の日本政府による「尖閣諸島国有化」に対する反発の結果である。政治がいかにもストレートに市場に反映するのが中国なのだ。韓国に比べ、わかりやすいといってもいい。


東日本震災当時、中国でもメディアは被災地を大々的に報じたが、訪日中国人は翌年、すぐに回復している

本来、政治と民間交流は別物と考えたいところだが、そうもいかないのが両国の事情のようである。我々はそれをクールに受けとめ、反面教師として考えるほかない。

両国を合わせると訪日外客数の半分を占めるトップ2の常連である中国と韓国が「政治の影響を受けやすい市場である」という現実は、日本のインバウンドが抱える不確定要因としての避けがたいジレンマなのである。

筆者は本レポートでこれまで書いてきた内容などをもとに、先ごろ「間違いだらけの日本のインバウンド」という本を上梓した。訪日外国人が増加した2010年代のインバウンドの明暗を含めた動向や課題を総括した内容となっている。

日本を訪れる外国人が3000万人を超えるということは、日本という国の歴史が始まって以来、初めてのことだろう。オリンピックイヤーを迎えた日本のインバウンドの近未来を考えるための材料となれば幸いである。

連載:ボーダーツーリストが見た「北東アジアのリアル」
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文・写真=中村正人

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