急速なビジネス環境の変化により、企業は不断のイノベーションを迫られています。そのイノベーションを改善思考で捉えるか、それとも破壊思考で捉えるかによって、企業の成長力は大きく変わってくると思います。
例えばトヨタ(オープンイノベーション4位、イノベーター集積度20位)は、豊田章男社長が「『自動車をつくる会社』から『モビリティカンパニー』にモデルチェンジする」と宣言し、ものづくりから人の移動に着目したモビリティ・サービス・プラットフォーマーへの転換を図っています。従来の自社の定義を破壊し、業態変革に踏み切ったわけです。
しかし多くの企業は、イノベーションをしているつもりが“改善レース”になってしまっています。イノベーションは進歩ではなく、価値の次元が変わること、過去には存在しなかった新しい価値を創造することです。過去の延長線上に改善を加えるだけでは、イノベーションは生み出せません。
その意味では、任天堂(イノベーター集積度1位)はかなりイノベーティブですし、ソニーも面白くなってきています(同2位)。ソニーは苦しい時代を経ながらも、外で薫陶を得た若手を再び会社に迎え入れたり、社内ベンチャーを次々誕生させたりといった柔軟な取り組みが功を奏しているようです。
今回のランキングのうち、イノベーション効率ランキングでは、上位の大半をヘルスケア関連企業が占めています。このランキングの指標となっている研究開発費は、言うなれば、自社が蓄えたお金を次の成長のために使う「投資」。したがって、たゆまざる研究開発を必要とするヘルスケアのような業態が上位を占めるのは、当然の結果と言えます。
反面、内部留保を溜め込んでいる企業は、このランキングにはあがってきません。そうした足踏みしている企業が少なくないことも頭に留めておくべきでしょう。
規模を問わず、企業の境界が融けてくると考えられます。それを示唆しているのがオープンイノベーションランキングです。異業種との組み合わせ、つまり、経済学者ヨーゼフ・シュンペーターが言う「新結合」によって新たな価値を生み出すというものです。
例えば製薬メーカーなら、IT企業と組んでみる。トイレメーカーと組んで、健康データ管理を始めてもいい。これは、最初に気づいた者勝ちのイノベーションです。