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2020.01.09

「物流の神様」フェデックスに立ち向かうアマゾンの秘策

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アマゾンとフェデックスの熾烈な戦いが全米で話題を呼んでいる。

このほど米アマゾン本社が、自社のウェブサイトで販売する非アマゾン小売店の出荷について、プライムシップメントである場合はフェデックスを使ってはいけないという内規をつくり、実施に移した。プライムシップメントとは、プライム会員を中心に翌日配達を約束し、多くの会員を集めているアマゾンの差別化戦略の柱だ。

独自の配送で大手を上回る

今回のアマゾンの決定には、フェデックスに出荷委託したホリデーシーズンの期日到着率が90.4%に落ちたことに、大きく不満を持ったことが影響している。同じく、この時期UPS社の期日到着率は92.7%であり、アマゾンの独自配送は93.7%となっている(シップ・マトリックス・インク調べ)。

フェデックスもUPSも、この時期の到着率の低下は天候不良を理由に挙げているが、アマゾンが独自の配送で超大手の彼らを上回ったことが、大きく自信を持たせたようだ。ちなみに、配送のための専用航空機の保有台数で比較すると、アマゾンが50機なのに対して、UPSは251機、フェデックスは651機もある(イノベーションタクティックス調べ)。

FedExのトラック
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去年の今頃、アマゾンはすでにフェデックスと主要な配送契約を打ち切りにしており、この契約だけでフェデックスは900億円の収入を失った。

ウォルマートやターゲットなど、アマゾンの競合企業も、オンラインの店舗は迅速な配送を顧客に約束してきたが、アマゾンが翌日配送にここまでこだわり、それを実現すべく自社の配送システムへの完全移行へ進みつつあることを受けて、小売業界の配送の現実が変わるとモルガンスタンレーは予想している。

Eコマースが浸透し、7割の顧客は、配送費を上乗せしてでも翌日配送を好むというデータもあり、アマゾンのこだわってきた戦略が正しかったことが証明されつつあるのだ。
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文=長野慶太

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