この連載では、彼女たちにインタビューを行い、海外で成功するブランディングのアイデアや、ご自身の見せ方のヒントを探っていきたいと思います。
今回インタビューしたのは、サプライズに満ちたニューヨークならではの料理教室を主宰しているひでこコルトンさん。ニューヨーク在住30年のコルトンさんは、日本ではモルガンスタンレー証券、アメリカではUBSで株のセールスに従事していました。
しかし、39歳で出産したことをきっかけに、人生観に変化が訪れます。毎日仕事に追われ、子どもとの時間を充分に取れないことにジレンマを抱えた彼女は、金融界を離れて40代で料理の道へ進むことを決意します。
なぜ、まったく畑違いの料理の世界を選んだのか。その理由は2つあります。コルトンさんは10歳で37歳だった母親を亡くし、10代のうちから妹たちのために料理をするようになりました。キッチンに立つことは生活の一部。忙しかった父が仕事の合間に作るシンプルな料理ではなく、食べる人たちの心が弾むような料理をつくりたい。この子ども時代の経験が、料理に対する情熱や探究心へとつながっていきました。
もう一つは、証券会社時代に数多くのパーティーに出席してきたこと。感銘を受けた料理や空間のコーディネート、そしてパーティーにまつわるサプライズや感動のストーリーを細かく記録し、ニューヨーク流のもてなし術とは何かを研究しつづけました。
自宅でビジネスの契約をまとめることもあるニューヨークでは、クライアントを自宅へ招いてもてなすことも重要。その良し悪しが、商談の行方に影響を与えることもあります。これは、洗練された大人にとって大切なソーシャルスキルのひとつ。そこにコルトンさんは目をつけたのです。
ニューヨークでは、平日・週末に関係なく、「ワインパーティー」「アカデミーアワードパーティー」「ペットパーティー」など、さまざまなテーマでホームパーティーが日常的に開かれています。
「ありきたりのもてなしに飽きてしまった人たちに、カクテルからお料理、テーブルコーディネート、BGM至るまで、訪れたゲストが一生忘れられないような刺激的でエンターテインメントに溢れるおもてなしを、体験しながら学べる場を提供したいと思いました」(コルトンさん)
42歳で料理研究家としてのキャリアをスタートしたコルトンさんは、有名シェフやティファニー、ディオールなどのハイブランドの企業と次々にコラボを実現。そのゴージャスで刺激的な独自のテーブル術は、テレビや雑誌から注目を集め、教室の予約が取れないカリスマ料理研究家へと変身を遂げました。