米アマゾン・ドット・コムの創業者でCEOのジェフ・ベゾスが自身のツイッターで離婚を発表したのは、2019年1月。離婚にあたり、元妻のマッケンジー・ベゾスが、どれだけの資産を手にするかということにも大きな注目が集まった。
元妻のマッケンジー・ベゾスとは?マッケンジーは、1970年、カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。3人兄弟の次女として育った。幼いころから読書が好きで、6歳の頃には『本の虫』というタイトルの142ページの大作を書いたという。
学業も優秀で、コネチカット州のホッチキス高校を1年飛び級で卒業。その後、プリンストン大学で英文学を専攻し、ノーベル文学賞受賞作家のトニ・モリスンに卒業論文の指導を受ける。モリスンが「私の創作クラスで最優秀の生徒の1人」と話すほど、高い評価を得ていた。
大学卒業後はニューヨークの大手ヘッジファンドの「D.E. Shaw」に勤務しながら、小説を書き続けた。1997年にアマゾンが上場をしてからは、子育てと小説の執筆に専念。最初の作品『The Testing of Luther Albright』は、2006年にアメリカン・ブック・アワードを受賞した。
現在は、いじめ対策組織「バイスタンダー・レヴォリーション」のエグゼクティブ・ディレクターを務めている。
ベゾスとの結婚生活ベゾスとマッケンジーの出会いは、先述のD.E. Shaw。同じ職場に勤務する二人はオフィスが隣同士で、マッケンジーは壁越しに聞こえるベゾスの笑い声に魅了されたのだそう。ベゾスがランチに誘ったことがきっかけで付き合いが始まり、約3カ月の交際を経て婚約、1993年に結婚した。
ベゾスは、当時のインタビューでマッケンジーのことを「機知に富み、賢く、聡明で、ホットな女性だ」と語っている。夫婦の間には息子3人と養子として迎えた娘1人の4人の子供がいる。
結婚後、アマゾンを立ち上げるベゾスはかねてからインターネットで書籍を売る構想を持っていたが、なかなか決断がつかなかった。
マッケンジーはそんなベゾスの背中を押して起業を決心させ、結婚の翌年には夫妻で仕事を辞め、シアトル近郊に引っ越した。そして、全ての貯金と両親や親戚、友人から借りたお金を投じて、家の小さなガレージでアマゾンを設立。当時、マッケンジーは経理や配送などの仕事をサポートしていた。
ベゾスがツイッターで「私たちが一緒に行ったすべての仕事で、マッケンジーの能力は大いに発揮されていた。彼女は類まれなパートナーであり、同志であり、母親だった」と述べているように、ベゾスが事業を成功させた背景には、マッケンジーの存在が大きかった。
25年の結婚生活に終止符を打ち、離婚順風満帆に見えた夫婦だったが、2019年4月に離婚が成立。離婚の原因は公表されていないが、社会貢献に対する価値観の違いや、ベゾスの不倫が原因との見解が多いようだ。
「世界一の富豪」の離婚というだけあり、離婚発表後から注目されてきたのが財産分与問題。二人は離婚調停により、2019年7月29日、離婚調停としては史上最高額の財産分割を行った。
マッケンジーが莫大な資産を手にするだろうという世の中の予想通り、その金額は桁違いだった。
マッケンジーに譲渡されたアマゾン株約4%は、350億ドル(日本円で約4兆1500億円)相当。これは「ブルームバーグ・ビリオネア指数」によれば23位、女性としては、世界で3位の富豪という位置づけだ。
今回の財産分割でベゾスの富豪ランキングが揺らぐことも予想されたが、分割後も1148億ドル相当のアマゾン株12%を保有しており、世界1位の富豪という地位は変わらない。
慈善事業に資産の半分以上を寄付ベゾスとの離婚調停が進む中で、マッケンジーは慈善運動「ギビング・プレッジ」への参加を表明。自身の保有資産350億ドルの半分を慈善事業に寄付すると発表した。
マッケンジーは「慈善活動に対し思慮深いアプローチを続けていく。慈善活動には時間、努力、気遣いが求められる」と述べている。一方、ベゾスはギビング・プレッジには署名していない。
ギビング・プレッジは、著名投資家のウォーレン・バフェットとマイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツが始めた寄付啓蒙活動。「資産家が生前または死亡時に資産の半分以上を慈善事業に寄付する」ことを呼び掛けている。これまでに204人の富豪が登録している。
マッケンジーの寄付表明はベゾスの考えとは対照的。世界一の富豪であるベゾスはこれまで慈善活動全般にあまり積極的でないことに批判の声も上がっている。